■セクハラ被害者、なぜ周囲に相談できない?

シマダさんが声をあげられなかったわけ
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 フリーランスライターのシマダさん(30代)はセクハラ被害の当事者だ。取引先の偉い人から半年に渡る被害を受けた。仕事を口実に食事に誘われたのがきっかけで、仕事が欲しかったため食事に応じるも、その後次第にエスカレートしたという。その内容は「ボディタッチ」「口説かれる」「駅のホームでキスされそうになる」「ホテルに誘われる」「日常的に『どうしてる?』などしつこい連絡」と多岐にわたる。

 声を上げられなかった理由は「『仕事に支障が出るのでは』という怖さと、誰に相談していいかわからなかった。相手方の会社窓口に言っても、誰が言ったかバレてしまうため、怖くて言えなかった」と説明する。

 また、「近くの人に相談しても『あいつは色恋で仕事を取っている』とウソが広まるのではと思った。正当に評価されたい気持ちがあり、セクハラ被害がマイナスに働く怖さもあった」と振り返る。「女性同士でも、恋愛の話とは違い、『セクハラされている』とは話しづらい。『自分が悪かったのでは』と思っていたため、女性同士でも話しにくかった」。

 山内氏は「『業界で生き残るためには、いなさないといけない』という価値観はある。色恋がらみのイメージが一度付くと、業界内で尾ひれが付いて、うわさ話として回る。その中で立ち回るのは難しく、『いま我慢すればいいか』となるのも仕方ない」という構図を示す。

 たかまつ氏も「人付き合いを考えてしまう。飲み会で太ももを触られて嫌だなと思っても、『言うと主催者はどう思うか』『場を悪くする』と考えると、冗談っぽくいなすぐらいしかできない。それでも勇気は要る」と、声を上げる難しさを明かす。

 そして、「アップデートできない理由は、偉い人がセクハラすると、盛り上がる人がいるからだ」と指摘する。「第三者は注意も同調もできるが、盛り上げるコミュニケーションとして成立させてしまうと、本人は言いづらくなる。第三者が冗談っぽくても、いけないことだと伝えることが大事だ」。

 リディラバ代表の安部敏樹氏は、「『色恋で仕事を取っている』というウワサが流れる人には、確かに仕事を発注しにくい。そうした意味でも根深い問題だ」とする。

■セクハラ被害をなくすには…
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