■家族を失ったのちに感じた“二次被害”
家族を失ってもなお、市川家への“二次被害”もあったという。「公営住宅への一時避難を希望したが、警察署が管轄する自治体では『加害者が暴力団員だから』と断られた。『他の住民が再被害に巻き込まれることを防ぐため』という理由だったが、私たちが被害を受ける可能性について、担当者は触れなかったそうだ」。
警察の対応は「支援を直接担当してくれた現場の警察官は手厚かった」としつつ、「県警の対応には問題があった。子ども2人の名前が報道されるのは、仕方ないかもしれないが、ある専門家からは『家族の名前も公表するなんて聞いたことがない』と言われた。私の名前を警察が発表したから、報道機関もそのまま出したのだろう。ただ、その二次被害は大きく、職場復帰の妨げになった」と話す。
メディア報道も、被害後の心の負担になった。「『捜査関係者によると、長男と元妻の間に女性トラブルがあったと警察官が述べた』という新聞記事を目にした。記者はそのまま書いたのだろうが、それが原因のひとつになった。“元妻”は犯人目線であり、長男からすれば同じ会社に勤めているが、別部署の女性社員でしかない」。
遺族給付金が680万円だったことには、「2人の命はこれだけなのかと思った」と肩を落とす。「警察担当者からは、『加害者側から見舞金や賠償金を受け取ったら、それを680万円から差し引く。加害者側が謝罪してもしなくても、遺族が受け取れる金額は決まっている』と言われた。それを聞いて、より深く傷ついた。給付金と加害者の謝罪は別物だ。制度に問題があり、公的機関からの二次被害だと感じる」。
■「長男を責める誹謗中傷はもうやめていただきたい。悪いのは犯人1人」
