■相次ぐ公演中止への反応は
相次ぐ公演中止に対して、中国人からは「公演キャンセルに胸が張り裂けそう。なぜ観客やアーティストが政治問題の責任を負わないといけない?」「少なくとも1週間前には知らせるべき」といった反応が出る一方で、「中国全国民が日本に怒ってる時に、こんなイベントは絶対に行うべきではない」「こんな時に日本の歌手を呼ぶなんて、主催者の背景を調べるべき」との批判も見られる。
在日中国人YouTuberの朱氏は、イベントの中止が相次いでいることは残念だと考えている。「絶対に政府がプレッシャーをかけているが、彼らはエビデンスを残さない。『俺がやっているのではない』と言う。大槻さんのライブ会場で撮られた映像には、『ばかじゃないの』といった観客の声も入っていた。航空券を買い、ホテルも予約するため、当然ながら観衆は怒る」。
ジャーナリストの周来友氏は、「今の外交状況において、政治と文化を切り分けることは理想論にすぎない」との立場を取る。「現場の忖度(そんたく)だけではできない。今回は『強気に行く』と上が方針を決めている」。
中国側の対応には「明らかにやりすぎで、オウンゴールのような感じだ。中止でなく『延期』と言えばいい。不可抗力を理由にしているが、誰からも信用も理解も得られない。なぜ『歌詞の翻訳に時間がかかる』『照明が故障した』などと言い訳しなかったのか。逆に日本側に攻撃材料を与えてしまった」と疑問を抱く。
自民党経済産業部会長の小林史明衆院議員は、「中国は間違ったところに手を突っ込んだ。国民も楽しみにしているカルチャーを止めて、国内から批判の声が上がるのは、中国政府として一番避けたかったポイントだろう。対応をミスしていると冷静に感じる」と語る。
文筆家で情報キュレーターの佐々木俊尚氏は「このような事態は尖閣国有化や総理の靖国参拝で、何度となく繰り返している。その度に中国は、国内の反日感情をあおって、対立に向かわせてきた。とはいえ、全てが成功しているとは限らず、収拾が付かなくなった反日デモを抑えることもある。その一環と考えると、驚く話ではない」とする。
今回については「『水産物の輸入停止』と『エンタメイベントの中止』の2つしかやらず、一番重要な『レアアースの輸出停止』はやらなかった。そこまで強く出られないという思惑があるのだろう。ただ、文化と政治が密接に関わっていると知ったインパクトは、中国側も日本側も大きい」と話す。
■日本のエンタメは好き、でも日本は嫌い 中国の本音
