■超大手映画会社の買収に乗り出したNetflixの狙い
Netflixは創業当初、レンタルビデオ配送サービスだった。そこからストリーミングサービスに業態転換し、業界の先駆者となった。日本には2015年に参入し、2025年現在で190カ国以上に展開、有料会員数は世界3億人以上にのぼる。主な事業内容は、動画配信やオリジナル作品制作、スポーツ中継だ。
DAZN Japanのチェアマン(会長)、ワーナーミュージック・ジャパンの会長を務めた経験を持つ北谷氏によると、「Netflixにはハリウッドのメジャースタジオ級の自社制作作品が少なく、それが弱みだった。“ブロックバスター”と呼ばれる超大作を自社で作る機能もない」という。また、WBO傘下にあるHBOも「捨てがたい存在」で、「日本でいうWOWOWのような有料放送の中で、最も歴史が長い。優秀な作品も多く、エミー賞も多く取っている。グローバルな存在でもある」と解説する。
これらを手に入れることで、「ストリーミング中心だったNetflixが、HBOのコンテンツや客層をキャッチできる」「世界的に配給されるハリウッド最上級映画も、自社コンテンツとして利用できる」といったメリットが得られるそうだ。
現状の映画業界については、「ハリウッドメジャーの作品は、クランクインまで3〜5年かかる。プロデューサーが企画をスタジオに持ち込み、5000万〜2億円ほどの“開発費”をもらう。そのお金で優秀な監督やキャストと交渉し、プロに脚本を書かせて、ようやくクランクインになるため、実際に100億円規模の作品が制作されるまでは時間がかかる」と説明する。
一方でNetflixなどの手法は「いろいろなプロデューサーに『巨額の投資はしないかもしれないが、気に入ったら即、全権利を買うから、とにかく作品を持ってきて』と声をかける」のだそうだ。「若手や中堅は金欠のため、将来的にメジャーで大ヒットする可能性があっても、背に腹は代えられず、Netflixからの前払いで制作する。事後の利益は分配されないかもしれないが、とりあえず作れて名前を売れる。自分の作品が売れないと大作は作れない」。
プロデューサーや監督としては、「従来は低予算の映画を作り、独立映画の映画祭で賞を獲得し、段階的に大きな存在になった。しかしNetflixで当たると、一気に業界から注目されて、ハリウッドメジャーのスタジオから声がかかるかもしれない」といったメリットがある。
資金調達の面でも、「GAFAが圧倒的に資金力を持っている。映画の世界では、ファンドが作品に投資するケースも多く、出資する以上は衰退していく企業ではなく、成長する企業にお金をかけたい。その点でもNetflixは有利だ」とした。
■スポーツにも進出 NetflixのライバルはYouTube
