■4つ子を妊娠し、減胎手術を決断した夫婦

ヨシコさんとタケシさん
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 結婚3年目のヨシコさん(29)は、不妊治療を通して今年6月に妊娠が判明するも、4つ子だと判明した。夫のタケシさん(30)は「最初は深く考えずに『4人育てていくのは大変』と軽い感じだった」というが、検査技師として病院に勤務していたヨシコさんは「見た瞬間におかしいなと。リスクのほうが最初に頭に浮かんできた」という。

 医師からは「全員おろす」か「全員産む」かを選択肢として与えられ、わずか2日ほどで決断するよう迫られた。限られた時間の中で、タケシさんは第3の選択肢である「減胎手術」を見つけた。

 ヨシコさんたちも減胎手術を希望したが、かかりつけ医は否定的で、「『(手術を受けたとしても)そのことを表に出すな』みたいなことを遠回しに言われた記憶がある」とタケシさんは振り返る。

 医師が消極的だったのには理由がある。法律上は胎児を外へ排出することが「中絶」の定義だが、減胎の場合は手術後も母体内に胎児がとどまるため、法律上の位置づけもあいまいだ。医師が「堕胎罪」に問われる可能性も否定できない。

 ヨシコさんは、実施を公表している数少ない民間のクリニックで、手術を受けることにした。「予約後も『本当に正しい選択なのか』と何度も思い直した」が、葛藤を乗り越えて受けた手術は無事成功し、来年は“双子”として出産する予定だ。

 減胎手術をめぐっては、「残された子を無事に産めるかを最初に考えた。リスクが少なく、しっかり治療してくれる病院を選びたいと、手術を受けようとした人は必ず考える。病院選びに悩むため、公的な病院がガイドラインを確立してくれた方が、患者側は安心して選択できる」とした。

 タケシさんは「不妊治療の末で、うれしい気持ちもあったが、ハイリスクのため悩んだ。時間がなく判断を迫られていた中で、この選択をして本当にいいのかと、ずっと悩みながら手術に臨んだ」と明かす。

 ヨシコさんによると、「私たちが手術した病院では、カウンセラーが手術前にメンタルケアしてくれた。話を聞いてもらってから、手術に臨めたため、事前に話せたことはありがたかったなと、いま振り返っても思う」そうだ。

■減胎手術とは
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