■減胎手術とは
しかし減胎手術は現状、実態として行われていながら、国としての指針さえ定まっていない。そんな状況を変えるべく動いているのが、大阪大学医学部附属病院・胎児診断治療センターの遠藤誠之副センター長だ。
2024年に国内初となる「減胎手術の臨床試験」を実施したが、「日本で研究を行うことで、最終的には法律が改正されて、減胎手術が一般の選択肢のひとつになることが一番望ましい形だ」と語る。ルール作りに向けた議論のきっかけにしたいという。
多胎妊娠については、「母体のリスクも相当高い。分娩時におなかが大きくなり、出血のリスクが増える。妊娠高血圧腎症の発症も増える。赤ちゃんが1人増えるごとに、妊娠週数は約4週間早くなるため、早産のリスクもある」と説明する。
その対処法となる減胎手術だが、「医師が消極的になるのは、法的な位置づけがされていないところが一番大きい」と話す。
減胎の対象とする胎児は、どのように選ぶのか。「残った赤ちゃんに不利益が及ばないように、包まれている袋に傷が付かないように選ぶ。胎児2人で1つの胎盤を共有している場合は選択できない。どのような胎盤や膜を持っているかの“膜性診断”で選ぶ」。なお、減胎手術は「胎児の遺伝的問題や、性別によって選択しないことが大前提」になっているそうだ。
ヨシコさんは「減胎手術では『心臓に針で薬を注入しやすい、一番手前にいる子にしましょう』と言われた。位置で決まる、運の話なんだなと思いながら説明を聞いていた」と語る。
■「取り上げていただくことは、すごく大きなこと」
