妻の所得が増えると夫の家事時間が「減る」
今回取材した拓殖大学の佐藤一磨教授の妻の収入と夫の家事・育児時間の関連性の調査を改めて見てみる。縦軸が夫の家事育児の割合を表している。横軸が世帯の収入の中の妻の所得が占める割合を表している。
妻の稼ぎは右に行くと増えていく。その分、妻の夫に対する交渉力が強くなっていくため、夫の家事・育児時間も増えていくはずである。ところが実際は、50~60%夫と同等の収入になるまでは上がるが、マックスでも21%程度。世帯収入に占める妻の稼ぎの割合が60%を超えていくとなぜか夫の家事・育児時間が減っていくという研究結果がある。
妻の所得が増えると、なぜ夫の家事・育児時間が減るのか。この現象には、3つの要因があると佐藤教授は考えている。
1つ目は、夫が失業中だとか病気療養中の場合。夫が所得も少なく家事・育児にそもそも参加できないというケース。2つ目は、 妻が大黒柱という状態。従来の性別役割分業意識、男は稼ぐべき、女は家を守るべき、そういうものから乖離した状況にあるので、妻の中で、「乖離を解消せねば」という意識が働いてしまい、むしろ妻が家事を増やし始めるという揺り戻し現象がある。3つ目は、 妻がお金を稼いでくれるような状況を納得できない男性が、家事・育児をしないという方法で男らしさを見せようとして、家事を放棄してしまう状況だといい、性別役割分業が深くかかわっているという。
こうした現象が性別役割分業に基づく「ジェンダーディスプレイ仮説」だという。
この研究結果に対し、白鳥は「よく(妻側が)『仕事に行かせてもらっている』という人もいる。それから男の人の方がいろいろと繊細だったりもするから、“男らしく見せよう”とするのもあるのかな。やっぱり自分が育ってきた家庭をどこかに思い浮かべながら生活してしまう」と私見を述べた。(『わたしとニュース』より)

