暴力団を離脱した後、斎藤さんは住み込みでの新聞配達などを経て、起業してある程度の成功を収めた。しかし、燃え尽き症候群になってしまう。そんなある日、富士山に登頂して感動。「俺にはやり残したことがある。それは勉強だ」と、1年で慶大に入ることを目標に設定した。

 とは言っても、中卒で勉強経験はほぼゼロのため、小学校1年生の国語から勉強を始めた。支えたのは、広島県福山市の「フジゼミ」だ。「ゼロからの教え直し」をモットーにしており、さまざまな事情を抱えた生徒を、年齢を問わず受け入れている。

 斎藤さんは、「たまたま出会ったところが、広島県にあるフジゼミ。『指ありません。暴力団でした。刑務所と少年院で10年行っています』と素直に言うと、『関係ありません。勉強したい人は誰でもOKなので』」と当時のやりとりを明かす。

 フジゼミの藤岡克義代表は「『アルファベットは大丈夫』と言うから、『じゃあ書いてみて』と言ったら、小文字が足りないし、『2分の1+3分の1』を『5分の2』と答えたり。彼はまだ高卒認定を受けていなかったので、まず大学受験の前に高卒認定試験で8科目受けないといけない」と振り返る。

 東京の仕事と掛け持ちしながら、広島に通い、途中からはウィークリーマンションも借りて、フジゼミに通い詰めた。結果として、わずか2年で慶大合格。「斎藤さんは人生経験豊富なので、ぶれることなく愚直なまでに『自分が決めたからには何が何でも受かってみせる』というタイプだった」(藤岡代表)。

最難関といわれる司法試験への挑戦
この記事の写真をみる(7枚)