■治療法は?

田中大介教授
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 知佳穂さんの主治医である、小児科専門医で昭和医科大学の田中大介教授は、「思春期の10人に1人と言っても、全員が学校に行けなくなるわけではない。この疾患の根本的な原因は、自律神経の不調だ。本来は朝になると交感神経が働き、血圧を上げたり、循環動態をコントロールしたりするが、それが朝から立ち上がらない。働き始める昼や午後になると元気になるが、夜寝て起きると再び活動できない。そこに一番の問題がある」と説明する。

 経過については「90%以上は高校生ぐらいで良くなってくる。思春期は背も伸び、体重も増える。二次性徴でホルモンも変わり、自律神経とのバランスがうまくマッチせず、血圧などに影響が出る」という。「人間の睡眠サイクルは『起きて16時間後に眠くなる』。10時に起きると、眠くなるのは深夜2時になり、寝ようと思っても寝られない」。

 「イベントの日は起きられる」というメカニズムは、「うれしくて交感神経が働くから」だそうだ。「朝その勢いで起きて、普段は使っていないエネルギーまで使い果たすため、次の日は疲れてしまう。イレギュラーでも交感神経が働いて、やりたいことができるのは良い。その反面、その後のことは今後考えていこうとなるが、周囲に理解されないと『ディズニーランドに行けたのに学校には来られない』と言われる」。

 治療法としては「特効薬はない。血圧に関わるため、水分1.5~2リットルぐらいと塩分を取ることがベースになる。起立性調節障害では、頭と心臓、足が平行だと血液が楽に流れるが、立つことにより下に行った血液を上げるメカニズムを作動しないとならない。そのため、さっと立ち上がらない、じっと立ち続けないといった姿勢の保ち方も重要だ」と説く。

■「同じ病気の当事者のために、もっと理解を広げていきたい」
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