■アメリカにある「社会で育てる」という視点

SOSを出さなかったわけ
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 こうした現状に対し、近畿大学 情報学研究所 所長の夏野剛氏は、日本における親権の強さと、社会的なサポート体制の未熟さを指摘した。

 「例えばアメリカとかだと、親の虐待だとわかった瞬間に親権を取り上げる。取り上げる一方で、その子どもが成人するまで社会が育てる制度がセットになっている。日本の場合、親権を剥奪することのハードルがものすごく高い。かつ剥奪した後に社会が育てる仕組みも不十分だ」。

 さらに、アメリカでは年間12万件の養子縁組があることを例に出し、日本における「家庭」という縛りの強さが、悲しい状況を招くとも指摘する。

 「言い方は悪いが、子どもも家庭を流動してもいいという前提に基づいて設計されている社会で育てるのがいいのでは。日本の場合は実子だろうが養子だろうが、家庭の責任をすごく重視するので、中に起こっている(トラブルなどの)ことにも児童相談所が介入できない。システムとして、もう少し軽くしていかないといけないのではないか」。

 特別養子縁組の斡旋団体「ベアホープ」代表のロング朋子氏は、まるさんのケースに心を痛めるとともに、同様のケースを心配する実親たちの心にも気を配る。

 「お子さんを託したお母さんたちが、この話を聞いてすごく心配されるという懸念がある。まるさんのような経験は、非常に胸が痛む。そこから我々、斡旋機関や児童相談所の職員が学ぶことは多い。ただ、この過去10年ぐらいで制度的にもかなり整備され、学ぶ場所も増えてきた。つい数カ月前も行政と民間機関の職員が集まって、まるさんの体験を伺い、我々に何ができるだろうかと検討した。制度的にも長期的にフォローを行えるように国も予算を付ける動きになっている。今のお子さんたちは、ある程度守られる環境にはある」。
(『ABEMA Prime』より)
 

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