自民党で議論がスタートした「国旗損壊罪」について、テレビ朝日政治部の小手川太朗記者が解説した。
日本国旗を侮辱する目的で傷つけたり汚したりする行為を処罰する「国旗損壊罪」の創設に向けて、自民党が議論を開始した。現行の刑法第92条には、外国の国旗を侮辱目的で損壊した場合を処罰する「外国国章損壊罪」があるが、日本国旗は対象外となっている。自民党はこの「不均衡」を正すことを目的としており、今国会での成立を目指している。
法案の内容については、外国国章損壊罪で禁止されている「損壊(破るなど)」「汚損(汚すなど)」「除去(掲げられているものを勝手に外すなど)」の3類型が議論のたたき台になる見通しだ。重要なのは「侮辱する目的」があるかどうかであり、スポーツの応援での寄せ書きや、子どもが悪意なく汚してしまった場合などは処罰の対象外になるとみられている。
この法案には、憲法が保障する「表現の自由」や「内心の自由」との兼ね合いという大きな課題がある。
自民党が議論のたたき台として示した資料では、「政府に抗議する表現方法として国旗を用いる行為なども処罰の対象に含まれかねない」「侮辱の目的を証明するために、自分の思想信条を捜査機関に明かさなければならなくなる」といった反対意見が示されている一方、賛成意見として「国旗を引き裂くことは、保護されるべき『表現の自由』とは言えない」との意見も示されている。
また、法律の必要性を裏付ける事実=「立法事実」があるのかという問題もある。過去に外国国章損壊罪で起訴された例は3件のみで、不起訴事案3件を含めても1977年を最後に適用されていない。岩屋前外務大臣は「今我々の周りに国旗が燃やされたり破られたりという事実がたくさんあるわけではない」と指摘する。
一方で、昨年の参院選時には、日の丸に「バツ印」をつけて抗議活動を行う様子も話題となった。与党側が立法を正当化できる事実を説明できるかが焦点になる。
海外の状況は国によって大きく異なる。ドイツ、イタリア、韓国は自国・他国ともに処罰対象としているが、アメリカ、フランス、中国は自国のみを対象としている。一方で、イギリスやカナダのように規定自体がない国もある。デンマークのように、国旗損壊罪自体はないが、別の法律で規制している国もある。
なぜ今、この法案が急速に浮上したのか。小手川記者は「この法律は高市総理の悲願。この一言に尽きる」と指摘する。高市総理は自民党が野党だった14年前にも同様の法案を提出しており、今回の政権下でその達成を強く期しているという。そのため政府内で調整に時間がかかる政府提出法案ではなく、議員立法という形で早期成立を目指している。国旗損壊罪に慎重な公明党が連立を離脱し、保守色の強い日本維新の会が連立入りをしたことも後押しとなった。
今後の見通しについて、小手川記者は「成立の可能性は正直言って高い」とみる。「高市一強」とも呼ばれる現在の自民党内で、慎重派は少数にとどまっていることや、衆議院で与党が圧倒的多数を占めているためだ。参議院では自民は少数にとどまるものの、すでに単独で刑法改正案を提出した参政党が自民・維新案の賛成に回れば、成立に大きく近づく。
(ニュース企画/ABEMA)

