■ネットの揶揄「キ族」と当事者の苦悩
最近のSNSなどでは、「キ」をはじめ「チ」や「リ」などのイの段の発音が苦手な人を揶揄する「キ族」というネットスラングが散見されるようになっている。理科の解説を行うYouTubeチャンネルを運営しているぽにょん氏は、自身の動画に対し「キ族なんですね」というコメントが寄せられた際、「めちゃくちゃからかわれている、悪口言われたなと思って、その時はへこんだ」と吐露。「ラリルレロが入っている言葉が発音しにくい。理科の用語も話しにくい。『ろ過』『コイル』『電流』などがそうだ。授業で出てくる言葉は、違う言葉に言い換えられない名称もあるので、言う時には少し身構える」とストレスを明かした。
会社員のマサキさんは、自身の「チ」の発音が「キ」に近い音になってしまうことに悩んでいる。例えば「知識」という言葉が相手には「きしき」と聞こえてしまう。「高校時代の授業でも3回聞き返されて、結局通じなかった」経験を持つ。
マサキさんは社会人として「第一印象で幼く見られ、発言の説得力が弱まる」という悩みもある。「特に固有名詞や店名など、文脈で補完できない言葉を伝える際には、完全に通じない状態になる」。そのため、普段の生活では苦手な発音を避けるための「言い換え」をしている。
なぜ、特定の発音が苦手な人が存在するのか。言語聴覚士として「ことばの相談室ことり」を主宰する寺田奈々氏は、そのメカニズムを解説する。
寺田氏によると、イの段が歪んで聞こえる現象は医学的に「側音化構音(そくおんかこうおん)」と呼ばれ、成人の相談者にも多い悩みであるという。「『キ』という音は、ベロを持ち上げて下ろして話す。舌の動きの過程で少し横にずれて発音をしてしまうという現象。舌の動かし方の癖みたいなもので、例えばお箸の持ち方が人と違うまま覚えてしまった状況に近い」。
またラ行が苦手な場合であれば「舌の先端を持ち上げて弾く。これをスローモーションで少しずつ動きを練習していくと、だんだんスピードを上げて言えるようになる」とも述べた。
■「個性」か「修正すべき点」か
