■改姓の94%が女性…名義変更は「大変の極み」と「社会から浮く」恐怖
海外では選択的夫婦別姓が多い中、日本だけが結婚で夫か妻のどちらかが名字を変えないといけない状況にある。実際に名字を変えたのは女性側がおよそ94%(2024年時点)と非常に高い割合となっている。
「体感としても94%くらいだろうなと思う。最近、Xで海外の言葉を日本語に訳されて流れてくるようになって、海外の方が新鮮に、日本が姓を選べないことに驚かれているポストなども目にした」(犬山氏)
結婚で姓を変えるとなると、あらゆる名義変更が必要になり、1カ所行けば全て済むわけではない。実際に経験した犬山氏も「もう見るだけで嫌。1カ所行けばそれで全部パッと済むのではない。いろいろなところに行って…。全部できているかどうか、いまだに謎」と苦労をにじませる。
2度の離婚を経験し、その都度名字を変えたり戻したりといった手続きを1人でこなしてきた鳥飼氏も、名義変更の負担について次のように語る。
「もう大変の極み。1回目にその時の夫の名字に変えて。2回目も変えて。それを戻してと人より多くいろいろな手続きをしないといけない。自分で選んだとはいえ、結局動き回っていたのは私だけなので、ちょっと違和感は感じていた」
こうした女性側に偏った名義変更に過度な負担を感じていた鳥飼氏。許可書が無効になり、また一から家庭裁判所に名字変更を申し立てる大変さを考えた際、「今のパートナーの苗字に変える法律婚にした方がまだ楽なのではないか」と思ったという。
「婚姻届を出せば終わりなんですよ。どうせ結婚するんだし、これまでも夫に合わせて苗字をみんなと同じように変えてきたし、それを今回もなぜできないの?と聞かれると、それは愛しているからとか愛していないからではない。法律に私が過剰に歯向かっているような気がしてしまった。すんなり次の名字に変えないで、元の名字に戻そうと動いていることが、社会から浮いているような気がしてすごく怖いと思った」
国の制度に対して、どう気持ちの整理をつけていくのか。犬山氏も複雑な心境を明かす。
「私自身は夫の名字をすごくかっこいいと思っていて、夫の名苗字になりたいと思ってなったけれど、やっぱり作業は面倒臭いと思いながら名義変更をやった」
「娘が今の名字を気に入っていると言っているが、もし将来結婚する時に、94%の女性が変えている中だと彼女も苦労するのかなという気持ちもある。また、結婚は“お得パック”のような側面もある。扶養制度や相続が受けられるなど、打算的な視点で結婚することを決めた。しかし、そこにはすごく罪悪感があって、私は法律に乗れたけど、同性同士はそこに乗れない。そして、自分の名字をお互いそのまま残したいカップルは選べない理不尽さの罪悪感はある」
「定量化できない」アイデンティティのぶつかり合い
