■氷河期世代の教訓と「努力が報われない」社会
20代の若者が「静かな退職」を選ぶ背景に、2ちゃんねる創設者・ひろゆき氏は「自分がすごく努力をして会社に貢献したとしても、突然その会社がなくなるかもしれないし、世話したつもりの上司や部下がいなくなることもある。自分の努力が報われない社会に、どんどんなっている気がする。それならば努力しないで利だけ取っている方がいいと、ゲーム理論的なところに落ち着いている気がする」と指摘する。
これに対し、ビジネスライターの黒坂岳央氏は「静かな退職」そのものは、以前から起きていたものだとし「昔からいたと思う。以前『Windows 2000』という当時のOSにかけた言葉があり、『窓際で年収2000万円をもらっているおじさん』という意味だった」と紹介した。
さらに若い世代に向けては努力を放棄することへのリスクも強調した。「今の20代が『静かな退職』をするということは、10年後、20年後に『仕事ができないおじさん』になるだけだし、そこで詰む。企業がリスクを取ってくれている若いうちに、経験・実績・スキルをつけた方がいいと思う」。
若者が「最低限の仕事」に留まる背景には、皮肉にも日本特有の強固な「正社員保護」というセーフティネットが存在する。竹中平蔵氏は、この法的・構造的な縛りが労働市場を硬直化させていると説く。
「なぜ正社員がすごく守られているのか。それは1979年の東京高裁の判例が出ているから。だから、それを変えていかないと、今度経済がまた一気に悪くなったら、就職氷河期世代のような同じ問題が生じる」。
近畿大学 情報学研究所 所長 夏野剛氏も、この「昭和の仕組み」がもたらす歪みを指摘する。「本来であれば非正規の方が安定しないので、給料が高いはず。ところが、正規の方が安定していて給料が高い世界を作ってしまった。企業からすると正規で1回雇った人を解雇できないので、そうすると入り口(新入社員)を減らすしかない。国の仕組みや労働法制、労働組合、経営のやり方がテクノロジー進化についていけず、就職氷河期世代が割を食った」と述べた。
■消失した「承認」と仕事のやりがい
