■「成功に対してのペナルティが助長される」
文筆家の佐々木俊尚氏は、今回の課税強化による税収効果の真偽と、国家予算の規模との比較について次のように持論を展開した。
「これは、そもそも何のためにやっているのか。不公平感の是正といえば確かにそうだが、増える税収としては日本の国家予算120兆円に対して4000億円ぐらいなもの。実際、スタートアップは、みんなが大儲けできるわけでもなく、10年生存率は1割にも満たない。生存しているのがやっとの会社もいっぱいあって、その中で事業を買収してもらえる、あるいは上場できる成功率はもっと低い。だから日本はアメリカみたいな大金持ちが、2000人ほどしかいない」。
また、4000億円の税収増よりも、スタートアップで得られた金を、さらに新たなスタートアップを生む方に流していくことの重要性を説く。
「そんな状況からむしり取って税収を4000億円増やすよりも、彼らが大儲けした金を社会やマーケットに還流していくことが大事。上場して得た何十億円を、エンジェル投資するとか、もう一回連続起業家になって別の会社を起こすとか、そういう部分に投資減税を行う方が、間違いなく正しい。そうやって次々に新しい投資家、起業家が現れて優秀な人が集まるスパイラルが起きる。『みんなで貧乏になりましょう』なんてやっていたら、いつまで経っても成長しない」。
また、音楽プロデューサーの松尾潔氏は、挑戦のリターンに対する国民の視線や、知的労働に対する社会の受け止め方について次のように述べた。
「(税収)4000億円は大きな金額だと思うが、リスクを含む挑戦をして成功した人がやっかまれるっていうのは、成功に対してのペナルティが助長される気がする。タックス・ザ・リッチ(富裕層や大企業への課税強化)という言葉もあるが、現状を見ていると成功している人への処罰感情を感じずにはいられない。むしろいわゆる古い大企業が巨大な内部留保をし、制度化された巧みな節税、あるいは嫌な言い方になるが政治や政権との近さ、によって利益を固定化しているところから、もっと強く取ることをしてもいい」。
議論を受けてEXIT・兼近大樹は、一般の労働者の立場に理解を示しつつも、挑戦する側との間に横たわる構造的な知識格差と社会の分断について率直な思いを語った。
「日本は社会保障がしっかりしているので、環境的な格差があまりない。でも知識の格差は大きい。例えば、スタートアップで一発当てようと言っている人もいれば、僕の周りにいるのは、なけなしの金で競馬で一発当てようという感じ。スタートアップで当てようなんて考えている人は1人もいない。知らないからこその、苛立ちもある。俺らの知らない世界の人たちが知らないことをして、楽して稼いでいると思ってしまうのも、知らないからだ。知ればスタートアップ会社の大変さとかも理解できる。この知識格差を埋めないと、足を引っ張ることしか考えない人はいなくならない。その人たちからすれば、お金持ちが税金をいっぱい払っているという話は、気持ちがいいし、ちょっと空気(ガス)が抜けるものだから。(超高所得の)2000人が損するだけで、何千万人の人たちが、ちょっと気持ちが楽になるというのも、知識格差の問題だと思うし、この分断をなんとかしたい」。
(『ABEMA Prime』より)

