「役者」ではなく「観測者」としてーー事件を追うナレーションへのアプローチ
2010年代、かつてストリートの暗部・半グレとして社会問題化し、今なお地続きの影を落とす「関東連合」。そのドキュメンタリーのナレーションというオファーに対し、東地は自身の記憶を重ね合わせるように話し始めた。
「自分も若い頃……20歳くらいの時には渋谷にいたので、関東連合の存在については知っていました。だから、懐かしさ半分、ただ『未だに終わっていないことなんだな』という実感を、この番組の原稿を通して改めて突きつけられた感覚です」
普段、物語の核心を担う「役者」としてマイクの前に立つことが多い東地。しかし、今作で求められたのは「事実を淡々と置く観測者」としての役割だ。そのアプローチの違いについて、自身のナレーターとしてのルーツに触れながら語る。
「もともと僕は、声優の仕事を本格的に始める前の20代の頃から、CMなどのナレーションをずっとやっていたんです。ただ、今回のようなドキュメンタリー、事件を追うような硬派な語りは初めてだったので、テレビで観てきた世界を自分がやるんだなという実感がありました。だからこそ、どういう語り口が一番良いのかは考えましたね。実際に罪を犯してしまった若者たちが、本当に自分たちが主導したのか、それとも上の人間にコントロールされてそうなってしまったのか。彼らの行為の是か非かという部分が、声を通してしっかりと伝わればいいなと思っています」
断片的な報道から「線の記録」へーー石元太一受刑者からの手紙と組織の変遷
これまで関東連合については、断続的に起こった事件や騒動についてのいわば「点」の取材が多かった。しかし今作では、徹底した取材によって組織の変遷が「線」として描き出されている。過去の報道から受けていた印象と、今回の収録で得た事実について、東地はこう語る。
「過去の報道が映し出すものはやはり断片的なもので、これまでは提供された情報をそのまま受け取るしかありませんでした。当時、ニュースでよく覚えていたのは、石元太一受刑者も関わったとされる六本木クラブ襲撃事件のこと。今回、彼が収監されている中で何を思っているのかという手紙を、僕は初めて目にしました。彼らが仕方なくやったわけではないにせよ、暴走族や関東連合という団体の中にいることで、そうなっていってしまう構造を強く感じました。聞いた情報ではなく、初めて彼自身の言葉を目撃したので、これを観た人がどう思うのか、僕自身も興味があるところです」
番組では、関東連合OBたちの証言などを交え、組織が時代とともに形を変え、現代の特殊詐欺や海外を拠点とした犯罪へと地続きで繋がっている可能性にも切り込んでいる。
「更生しきれずに再犯を繰り返してしまう背景には、過去の仲間との関係性が深く関わっているのだと思います。組織のあり方が変質していった結果として、現在の海外を拠点とした特殊詐欺にまで繋がっている疑惑。これらは僕たちの日常を脅かす身近な犯罪ですし、個人的には根絶やしにしてもらいたいという思いが強いです。原稿を読みながら、時代とともに組織の性質がこれほど変わっていったのか、と考えさせられました」
現代のSNS社会に提示する「報道の矜持」

