
普段、何気なく目にしている名字にも、地名や自然、人々の願い、歴史上の人物との関わりが隠れています。
このコーナーでは、過去6回にわたって日本の名字ランキング40位までのルーツや歴史を紹介してきました。
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まだまだある身近な名字。今回は41位から50位まで、そのルーツを紹介します。
身近な名字に残る、源頼朝ゆかりの伝承
佐藤ちひろアナウンサー
「おはようございます。名字ランキング1位の『佐藤』ちひろです。きょうもよろしくお願いいたします」
森岡浩さん(名字研究家)
「森岡です。よろしくお願いします」
佐藤アナ
「41位以降はどうなってますか?」
森岡さん
「まず41位は『青木』さんです。青木っていうと地名が各地にたくさんあるんですけど、割と関東に多いという感じはしています」
佐藤アナ
「源頼朝を隠す時に使われて…」
森岡さん
「それもあります。基本は地名なんですけども、神奈川県の真鶴町は町で一番多い名字が青木さんなんですね。その真鶴町の青木さんだけ特別のルーツがあって、それが源頼朝と関係しているってことになっています」
石橋山の戦いで平家方に敗れた源頼朝は、真鶴のしとどの窟に身を潜めます。その時、地元の住民が植物のアオキを入り口に置いてカモフラージュしたといいます。それで助かった頼朝は、住民にお礼として「青木」という名字を与えたと伝わっています。
佐藤アナ
「名字をもらうことはすごく名誉なことだったんですよね?」
森岡さん
「そうですね。その時、頼朝は戦に負けて逃げている時ですから、与えるものがない。そういう意味で名字を与えるってことしかできなかったのかもしれないですね」
他にも頼朝は、隠れた洞窟の見張りをした人に御守(おんもり)さん、珍しい貝を献上した人に生貝(いけがい)さん、エイを献上した漁師には鰭崎(ひれさき)さんなどの名字を与えたといわれています。
名字から分かる暮らし
佐藤アナ
「42位は『藤井』さん。藤井といいますと、前回習った藤田さんと同じく植物由来?」
森岡さん
「そうですね。藤原氏由来は藤(とう)なので、藤(ふじ)が付くとフジという植物になります」
フジは古い時代、つる植物全般のことをこう読んでいて、水くみ場や用水路を意味する「井」と掛け合わせた藤井さんは、フジのある井が由来だと考えられます。
佐藤アナ
「43位は『西村』さん」
森岡さん
「偉い人、あるいは村の中心部から見て西の方に住んでいた人が名乗ったのが、西村さんになります。同じパターンで、北村さん、東村さん、南村さん当然いるんですけれども、西村さんが一番多いですね。これは昔の人がどこに住んだかってあって、昔の人って谷間に住むのが良いんですよ。敵に攻められないから。どんな谷間がいいかっていうと、中で田んぼを作りますから、日当たりの良い谷間がいい。そうすると、谷間の奥に住んでいる人は、東が空いている谷間だと西が奥だし、南が空いている谷間だと北が奥になりますので、西村さんと北村さんが多くて、東村さんと南村さんは少ないです。この名字を見ただけで、実は昔の人がどういう所に住むのが良かったかまで分かったりします」
佐藤アナ
「面白いですね」
「福」に込められた意味
続いて、44位の「福田」さんの由来です。
森岡さん
「やっぱり日本人は水田・田んぼが大事ですので、田の付く名字って多いんですね。田をどうやって区別するか。自分の田んぼは他の田んぼと違うんだよってことを言わなきゃいけない。じゃあ、福田さんの福は何かっていうと、自分の持っている田んぼはとてもいい田んぼで、自分とか子々孫々まで福をもたらしてくれる、ものすごくいい田んぼになってほしい、なりますようにという願いを込めた名字です」
佐藤アナ
「願いも名字になることがあるんですか」
森岡さん
「そうですね。自分の持っている田んぼは、ただの田んぼじゃないんだよっていうことですね。これは福田さんに限らず、福の付く名字って他にもありますよね。福井さんとか福山さんとかありますけど、同じ福の付く名字というのは、そういう願いが込もっている名字だと思います」
佐藤アナ
「福って今までとちょっとニュアンスが変わっていて、願いっていうのがまた素敵ですね」
森岡さん
「昔は言葉をものすごく大事にする。言霊があるように。ですから、いい言葉を当てはめると、そういうふうにきっとなるに違いないと昔の人は思った。ですから、福とか“吉(よし)”を使う」
佐藤アナ
「吉田さんとか?」
森岡さん
「吉田さんもそうですね。子孫にいいことがありますようにという名字ですね」
太田も大田も由来は同じ
お次は45位、「太田」さんの由来です。
森岡さん
「太田さん、太いって書くじゃないですか。太い田んぼってないですよね?」
佐藤アナ
「大きいじゃないんですね?」
森岡さん
「そこなんですよ。“大”で始まる名字って実はたくさんありますけど、“大”の付く大田さんもいますけど、点のある太田さんのが多いんですね」
佐藤アナ
「どうしてですか?」
森岡さん
「これはよく分からないんですけども。ただ、古代はやっぱり点のない太田さんの方が多かったようです。それが時代によっていつの間にか、点の付く太田さんの方が多くなってきたみたいですね」
佐藤アナ
「不思議ですね」
森岡さん
「これは太田道灌で有名な太田氏っていう一族が栄えたので、“おおた”の言葉が先にあって、後から漢字をあてる際に、太田道灌の太田が有名なので、太田っていえば点のある方だよねってことをみんな考えたんじゃないかと思います」
この名字に使う漢字の「太い」と「大きい」で意味の違いはなく、「大きい田んぼ」を持っていた人が名乗ったのがオオタなんだそうです。
「三浦」ルーツは地名
佐藤アナ
「そして、46位は『三浦』さん」
森岡さん
「これはもうルーツがはっきりしています。地名です。神奈川県に三浦半島ってあります。今、三浦市がありますけど、今の三浦市は後からできた地名で、元々あった三浦って横須賀市の佐島辺り。この三浦という地名を支配したのが桓武平氏の一族で、その一族が地名からとって三浦と名乗ったのが始まりです」
そんな三浦氏は鎌倉幕府の中で最大勢力となり、一族が全国各地に広がります。
「地名を由来とする名字は地名がいっぱいあるから今も多い。三浦のように特定の地名からここまで広がるってなかなかないですよね」
自然や地形が生んだ名字
続いて、47位の「岡本」さんです。
森岡さん
「岡っていうのは自然のままで、地形として周囲より高くなってる所。山というほどじゃないけど高い所ですね。そこに住んでいた方で、岡本なので、本っていうのはふもとという意味です。ですから、そういう小高い所のふもとに住んでいた人ってことになります」
佐藤アナ
「続いて48位の『松田』さん。松っていうと何だか、めでたそうな雰囲気」
森岡さん
「そうですね。これも松本さんで出てきましたけれども、松は冬でも葉が落ちなくて枯れないから、とても縁起がいい名字です。神聖な木とも言われています。ですから、(木の種類で)松の付く名字が一番多い。松の木の生えている近くにある田んぼなんでしょうね」
佐藤アナ
「なんだか素敵な原風景が浮かんできますね」
森岡さん
「松のあった田んぼで各地にある。武士でも一つだけ有名な松田家がありまして、神奈川県に松田町ってありますけど、そこをルーツとする松田一族っていうのがいて、これが戦国時代、北条氏の重臣としてかなり活躍したので、かなり子孫も各地に広がっています。ですから松田さん、意外とこの神奈川県の松田の地名にちなむ松田さんも結構いると思います」
中がつく「中川」「中野」
49位は「中川」さん、50位が「中野」さん、両方とも中が付いています。
森岡さん
「中川っていうと、川が3本あったら、真ん中が中川になります。特に昔は護岸工事をやっていませんから、大きな川だと下流になると川が何本に分かれてきます。何本もあるうちの真ん中の中川はたくさんあった」
「中野は、野がいっぱいあって、真ん中の野ってことはあんまりないと思うんですよ」
佐藤アナ
「そうですよね。どうやって中か分かんないですね」
森岡さん
「野っていうのは、平地の中でも水田化している所。ですから、かなり広い地域を水田化している野の中で、真ん中の辺りが中野さんになります。意味としては、真ん中の、とはいうんですけれども、川が複数ある真ん中のっていうのと、広い野の中の真ん中のっていう意味で、微妙にちょっと意味が違うかと思います。両方とも地名もたくさんありますから、地名にちなむ中川さん、中野さんもいると思います」
難読名字クイズ
と、ここで恒例の難読名字クイズ。「鴨脚」は何と読むのでしょうか。
佐藤アナ
「鴨のあしさん?」
森岡さん
「漢字の意味から考えると正解に辿り着きます」
佐藤アナ
「それこそ本当に水辺をスイスイ動くけど、白鳥とかよくいうじゃないですか、下はバタバタしているみたいな。すいめんかさん?」
森岡さん
「鴨の脚の形そのものをイメージした方がいいかもしれないです」
佐藤アナ
「つめさきさん?」
森岡さん
「植物です」
佐藤アナ
「植物?もみじ?」
森岡さん
「もうちょっと…」
佐藤アナ
「違う!もみじじゃない!」
森岡さん
「同じように紅葉する木です」
佐藤アナ
「いちょう?」
森岡さん
「正解です!」
佐藤アナ
「いちょうさん!」
カモの足がイチョウの葉っぱに似ていることから、名字でもこう読むのだそうです。
森岡さん
「京都の下鴨神社ってありますよね。あれも神官が昔からずっと名乗っている名字です」
佐藤アナ
「やっぱり鴨がつくからなんですか?」
森岡さん
「あそこは賀茂氏という古代豪族の子孫が下鴨神社の神官をやっていましたので、その子孫の人が名乗る時に鴨を使いたかったっていうのもあるかもしれませんね」
(2026年5月27日放送分より)
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