■精神科医による「言い返す技術」、僧侶による「言い返さない優しさ」
「言い返す技術」の著書がある精神科医のゆうきゆう氏は、言い返さないことの心理的・社会的リスクを指摘する。人間は序列を作りたがる生き物であり、「こいつは言い返さないんだ」と認識されると、理不尽な扱いがエスカレートする可能性があるとした上で、「否定や批判をされ続けると、何をしても無駄だという『学習性無力感』に陥り、どんどん自分の気持ちが負け犬になってしまう」と警鐘を鳴らした。
対処法として、相手に「態度が悪い」と言われたら「態度が悪いですか?」とそのままオウム返しにする「反射の戦術」や、相手の主張全体ではなく一部にのみ反論する「分散の戦術」、相手の前提を崩すために「それはどういう立場からのご質問ですか?」と聞き返す「質問の戦術」を挙げ、一言からでも反論体験を積む重要性を説いた。
対照的に、臨済宗の僧侶である青巌宗晃氏は、「言い返せない人は優しい」という自身のSNS投稿に17万件の「いいね」が寄せられた反響を紹介した。「言い返せない人は頭の回転が悪いのではなく、腹が立っても言葉を選ぼうとする優しさと賢さがある人だ」と当事者に寄り添う姿勢を示した。
「言い返さないと大変なことになる場合もある」と前置きしつつも、仏教や禅の観点から「心を傷つけないこと」を最優先とし、「できたら相手の心も傷つけず、自分も傷つかない人になれれば無敵だ」と語り、感情に流されて争うよりも、マインドフルネスや座禅のように自身の感情を客観視するメタ認知の重要性を提示した。
現場でどう振る舞うべきか議論が交わされた。2ちゃんねる創設者・ひろゆき氏は、人間のストレス耐性は高くないとして、「ダメージを自分に残さないようにするテクニックの方が学習しやすい」と指摘。「家族に言い返したらその後も大変。ずっと機嫌の悪い彼女が家に居続ける針のむしろみたいな時間を考えたら、言い返さない方が絶対楽だ」と、長期的関係における沈黙のメリットを強調した。
さらに自身が論戦を行う際は、怒りではなく「こういうボールを投げたらどうなるだろうという知的好奇心」で取り組んでおり、相手の言葉に感情を振り回されていないスタンスを明かした。
リディラバ代表・安部敏樹氏は、反論するかどうかの前提として「そこに理性的にジャッジをする能力がある環境があるのか」を見極める必要があると指摘した。管理職として振る舞いに悩むイシダさんに対しては、合理的な判断を下すために「相手の真意を理解するまで、質問を重ねていくことが正攻法だ」と実践的な助言を送った。また、会話のテンポが合わないという悩みについても、無理に合わせるのではなく、テンポが合う人同士でチームアップを図る方が組織としてパフォーマンスが出るとの視点を提供した。
これらの議論を通じ、イシダさんは「自分が大好きすぎて、傷つきたくないというところで、完璧を求めて言い返せないところがあるのかなという気づきがあった」と、自身の深層心理を客観視した。この自己分析に対し安部氏は、「怒れるとか、悲しめるとか、誰かのために何かをしたいと思える感情のドライバーがあるということは、人間として素晴らしいことなので、そこは抱きしめてあげてほしい」と語っていた。
(『ABEMA Prime』より)

