■黙秘を続ける容疑者と、遺族が挑む「民事訴訟の時効」という壁
26年が過ぎての容疑者逮捕は、ほかの未解決事件の関係者にとって希望となった。豊明母子殺害事件の被害者遺族、天海としさんは「テレビを付けて速報で流れた時は鳥肌が立って、パッと明るくなりましたね。泣けてしまってうれしくて。仏壇の前に走って行って、妹たちや子どもに報告しました。次はうちだよって」と語る。
世田谷一家殺害事件の早期解決を願う集会。高羽さんは、DNAから似顔絵を作成する手法を捜査に導入して欲しいと訴えている。
「遺伝子情報を使えば、私の事件ももっと似た似顔絵ができて、もっと早く解決したんじゃないかなと思っております。世田谷事件、DNAがありますので、ぜひそれを使って早く似顔絵を作っていただけたらなと思っております」
高羽さんの民事訴訟を支援する「宙の会」特別参与の土田猛さんは、高羽さんについてこう語る。「遺族のメンバーの中で悲しんでいるだけではだめだよという思いは自ら強く発信していますから。我がことの動きだけではなくて可能な限りみんなに寄り添うという立場で動いている非常にありがたい立場」。
高羽さんは「26年前の自分には、みんな助けてくれるから、前向いて一生懸命やればいいことがあるよと。いつもそれを(昔の自分に)声掛けてあげたいなといま振り返ると思うので。本当に不安で不安で仕方ない毎日だったので」と明かす。
航平さんは2年前に結婚。東京で自分の人生を歩みながら、父の活動を思いやる。
「できるだけ衰えが来ないように自分で体調の管理をしていると思うので、僕はそんなに心配していないですけど。解決したらしたで本人は、DNAを捜査に組み込むのをやってほしいというのを訴えかけていきたいとずっと言っているので。なんとかして自分みたいな思いをする人が減ればっていうのが原動力だと思うので、続くうちはできるだけ長く活動してもらうのが本人にとっても生き甲斐なのかなと思っています」(航平さん)
高羽さんは、容疑者が逮捕されたあとも現場のアパートを借り続け、毎月、家賃の振り込みに行っている。「安福の家の前を通るんだよね、ふざけるなっちゅう話だし」。銀行に向かうたびに通った道。その途中に、安福容疑者の自宅があることを逮捕後に知った。「普段は心穏やかに振り込みに行っていたけど、最近はむかつきますよね。あいつの家の前を通ると」。
「26年間、毎日不安だった」「事件発生日になると悩んで、気持ちも落ち込んで沈んだ」当初は取り調べに応じていた安福容疑者。その後、黙秘し事件の真相解明は進んでいない。
事件後に支払ったアパートの家賃は2200万円以上。いまは月5万円を払っている。
「年間60万あればいろいろなことができる。ただね、奈美子がいれば旅行にでも行けたけどね、一人じゃもう…。どこかで区切りを付けて片付けて。その頃には航平にも孫ができているかもしれないので、孫のためにお金を使うことが喜びになっているかもしれないので。そうすれば片付けていいかなと。奈美子も許してくれるかなって」
去年の大みそか。高羽さんは「新たな壁」に挑むことを決めた。民事訴訟の時効だ。殺人の時効は撤廃されたが、民事の損害賠償請求には20年という時効が定められている。民事訴訟の時効は過ぎているが、高羽さんは今後、訴えを起こし司法に判断を仰ぐ覚悟だ。
「宙の会」特別参与の土田さんは、「高羽さんの場合は26年過ぎているから被告人に対して損害賠償を請求する法体制になっていない。それはおかしいじゃないの」と指摘する。
高羽さんは「これからのことなので。ただ事件後から言っているように奈美子は自分と結婚しなければ死ぬことはなかったと思うと、やはり自分を責めますので。責めてばかりじゃ前に進めないので、奈美子のためにも、奈美子の死が無駄にならない形になれば、良い判決が出ればいいなと思っています」と語った。
そして2026年3月、高羽さんと航平さんは、安福被告を相手取り損害賠償を求めて提訴、民法の壁に挑む。
※年齢等は2月14日地上波放送当時
(名古屋テレビ放送制作 テレメンタリー『晴れない霧~手帳が語る被害者遺族の26年~』より)

