■「軽い人がいるということは、重い人がいないことではない」
発達診断を行う小児科医のともひろさんはADHD当事者だ。「片付けられない、忘れ物が多い、役所の書類で抜けが生じる、物事を順序立てて進めることが難しい」といった困難を日常的に抱えている。また、今年だけで傘を20回以上置き忘れ、自宅では3〜4週間分のゴミが玄関に積まれたままになることもあり、「散らかっていると言われたら、散らかっているなとは思うが、生活してて目に入ってこない」と語る。
こうした困難に対処するため、活用しているのが生成AIだ。散らかった部屋をカメラで撮影してAIに投げ、片付けの手順を一つ一つ提示してもらうことで、何から手をつければよいか分からないという障壁を乗り越えている。「片付ける時の問題は、何から手をつけていいか分からないというところ。一つずつ言ってくれれば、じゃあそれはやろうかとなって、結果的に片付く」と話す。そのほか、「手帳とアプリの両方でメモを取ること、頭の中のごちゃごちゃを書き出して客観的に眺めることも、日々の生存戦略として欠かせない」という。
診断を受けたのは20代半ば、社会人になってからだった。「結構本当につらい時期だったので、ある意味、ただの努力不足じゃなかったんだなという救いの面もあった。一方で、どうしたらいいのという迷いや不安もあった」と振り返る。医師として患者を支える立場でありながら、当事者として苦悩と向き合い続けているともひろさんは、「こうした経験が外来でのかかわりにもプラスに働いている」。
カジュアル化について最も問題視するのは、軽症例と重症例が混同されてしまう点だ。「軽い人がいるということは、重い人がいないということではない。そこが切り分けられていなくて、『みんなそうなんだ』となってしまっていることが一番の問題」と指摘する。また、「診断の基準についても誤解が広がっている」として、「SNSでADHDやASDの特性がずらっと並んでいて『これめっちゃ当てはまる』というものがあるが、大事なのは、当てはまるかどうかではなく、当てはまった上で困っているかどうか。そのもう一段階が重要だ」とした。
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