貸したお金は2カ月で250万円以上に
親密な関係を維持するため高野被告は、金を工面し続けた。「(お金なくて)あいりの名前でお金借りたいけど借りられない。名前を貸して」「いくら借りたい?」「50以上借りたい」「それはやばいな」「こんな感じ」。
高野被告は、消費者金融からも借りるよう求められるようになった。「おれ仕事してないから借りれないかも」「49万?」「多分50万」「もうちょいほし」。
佐藤さんへの貸し付けは、2カ月で合わせて254万4800円にのぼった。「いけたわ50万。返済宜しく」「うん」「残りも送金行ける?」「40万入れとくね」。佐藤さんは「すぐ返す」と伝え、一度だけ3万円を返済した。
しかし、それ以降、貸した金が戻ることはなかった。「お金返してくださいお願いします」「振り込んでみるわ」「いつ? もうお金返す気があるの?」「ごめん」。その後、返済を求めても返信はなくなった。立場は、完全に逆転していた。そして、「あいり」「助けて」と、いつの間にか、高野被告が佐藤さんにすがるようになっていた。
高野被告は2023年、貸金の返還を求めて民事裁判を起こした。就労支援で職に就き、警察にも、法テラスにも相談。裁判所は、佐藤さんに金を支払うよう命じた。しかし、差し押さえた口座の残高は約160円と、ほとんどなかった。「稼ぎの多くは事務所に入り手元に残るお金は無く、財産は無い」(佐藤さん)。
一方、佐藤さんは、交際していた男性との結婚をSNSで公表していた。判決によれば、婚約者とともに、“収入を隠すような行動”も取っていたという。貸した金が戻る望みは完全に断たれた。報われない絶望が、高野被告をのみ込んでいったのか。のちに、判決もこの経緯には「相応に同情の余地がある」と述べる。
このころ高野被告は、知人BさんにLINEを送っている。「お金を返してもらうのは、ほぼ諦めている。復讐だけしたい方向になっている。お金の問題を世間にさらしたい。裁判沙汰にしたいと思った」(公判から)。恋は、憎しみに変わっていた。
その2日後、被告は通販で、のちに凶器となるナイフを1本購入。もう1本のナイフは、前年の12月に購入していた。「あいつには苦しんでほしい」(知人BさんへのLINE)。
犯行の前夜、高野被告は1本の配信告知を見る。そこで佐藤さんから“明日、山手線1周”と発表されたことから、翌日の犯行を決意したとされる。
生配信のカメラを向け「まだ動くんだ」「死んでますかね」
