住民が語る「シカの猛威」
街を走っていると、小さな直売所「湖南四季の里直売所」を見つけた。店先に並ぶのはその日の朝にとれた野菜で、従業員は「今日から発売になりました布引大根、甘い」と、高原の寒暖差のなかで育ち、甘味を蓄えたこの土地自慢の布引大根。
しかし「今年はシカは多い?」と尋ねると、従業員は「下の方の民家の近くでも(シカが)カボチャとかをそのままきれいに食べていく。明日収穫しよう、というところを食べます」と証言。米農家は「イノシシも困るけど、シカも。それぞれ食べるところが別。イノシシが掘り起こして食べる。シカは(葉っぱの)先っちょをパクパク食べる」、プラム農家は「シカの鳴き声がすごい。『キャンキャン』みたいな。近くにやっぱりいるんですよ」と、シカ問題が身近なものになっていることを明かした。
直売所に並んでいた布引大根にも被害が出ている。布引大根農家の佐藤氏は毎年「郡山布引風の高原まつり」でも大根を販売してきた。しかし畑を訪れると、土から引きずり出され、無残にかじられた大根が多数あった。佐藤氏はシカについて「(今でも)入っていますね…。ここ5年くらいから段々増えてますね。(収穫量は)少なくなってしまいまして」と語り「毎年恒例だったので、できないのは残念」と、食害に加え、祭りの中止で販売の機会まで失われたことを嘆いた。
被害は農家の畑だけではない。近隣住民は畑を指して「これがシカの足跡」「1個も無くなっちゃった」と1年かけて育てたカボチャが、すべて無くなっていたと証言。千葉に暮らす孫もこのカボチャを楽しみにしていたという。
その住民は「川を下ったところで、シカが母親と子どもで水を飲んでいた姿を見て『素敵だな、かわいいな』と思った。4~5年過ぎたら、自分がこんな被害に遭うとは思わなかった。獣たちも生きていかなくちゃいけないから致し方ないことなのかもしれないが、おばちゃんにすれば心が痛みました」と複雑な胸中を明かした。
ひまわり農家の無念
