■「蟻の一穴」か「受診機会の公平化」か
ファストパスの金額設定と、そこから派生する格差拡大への懸念も大きな論点となった。
藤田氏は「500円でいいんじゃないかと認めると、1000円、4000円、5000円と上がっていくことは自明だ。制度上明確な上限がなく、社会通念だと言われてしまえばそれが通ってしまう。これは“蟻の一穴”で、最初は500円でもいつか堤防が崩れる」と警戒感を示した。介護施設の待機や保育園の待機児童を例に挙げ、「介護保険の人たちも老人ホームに入るのを待っている。これも5万円追加で払えば順番を前にできますよ、となるのか。保育園の待機児童もお金を払えばとなるのか。むしろ今は貧しい人ほど先に入れるような仕組みになっている。資本主義を導入しすぎると、一番弱い立場の人に歪みがいく」と述べた。
アレン様も「500円が2000円、3000円とどんどん上がっていくと、資本主義持ち込むのかよとなってしまう。上限はある程度決めた方がいい。前日に予約枠が埋まってしまって、当日朝に高熱が出た人がファストパスを使いたくても使えなくなる、という状況も嫌だ」と懸念を示した。一方で、既存の高級病院のVIPルームや、歯科での保険外診療など、医療機関にすでに資本主義的な側面があることも指摘し、「このファストパスも含めて、余剰のお金を取るサービス全般の議論が必要だ」と述べた。
これに対して原氏は「需要があるからといって際限なく価格を上げられるような仕組みにはしない方向で考えている。金額設定は現状、制度上の制限があるわけではないが、社会通念上許容される範囲での設定が必要だと思う」とした上で、「医療上のニーズとそうでないものの線引きをどのように行っていくかは非常に重要。もしその線引きがずれ込んでいったら、本当にお金で受けられる医療に差が出る世界になりかねない」と、自身も課題として認識していることを明かした。
メルカリ AI strategyのハヤカワ五味氏は「病院の経営が厳しく、既存の医師が経営上の理由から美容医療など保険外診療の分野にスイッチすると、結果的に保険で受けられる病院が減ってしまうという問題もある。すでにそのような状況が起き始めており、であればある程度ルール化してみんなが見える状態で運用した方がクリーンではないか」と述べた。また「今の保険制度もかなり限界。今の金額で回すこと自体が難しくなっている」と付け加えた。
TikToker・YouTuberのYuna氏は「待たされすぎて(億劫となり)何年も病院に行けていないが、待たなくていいなら行こうという人も多くいると思う。500円ならそれが実現できる」と、受診促進効果への期待も示した。
原氏も同様に「昼休みしか病院に行けないのに1時間半かかるから受診をやめる人がいる。ファストパスがあることで受診する機会を得られるという方にとっては、むしろアクセスを公平にしている面もある」と述べた。
藤田氏は最後に「こういう議論はあっていいと思うが、他の国でもかなり反対している国が多く、禁止している国もある。日本もこうやって議論してどうするか、ラーメン、テーマパーク、病院の待ち時間をすっ飛ばせるんだということが国際的にはなかなか難しいだろうと決めている国もある。日本はどうするかだ」と述べ、医療における公共性の議論を続けることの重要性を改めて訴えた。
(『ABEMA Prime』より)
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