■日米連携と「日本の繊細さ」が勝ち筋になるか
元デジタル大臣の平将明氏は、日本がフィジカルAIに注力する合理性として3つの理由を示す。「ChatGPTやGeminiのようなラージ・ランゲージ・モデルは今から戦っても勝ち目がない。フィジカルAIはビジョン・ランゲージ・アクションという別のモデルであり、戦い方が変わる」と述べる。
次に「サイバー空間では米中がしのぎを削っているが、フィジカルAIの領域ではアメリカのものづくりは弱く、日本はモーター・電池・センサー・アクチュエーターが強い。日米で組める分野だ」と指摘する。
そして3つ目に安全保障上の問題を挙げ、「中国製ロボットにはバックドア(外部から不正にアクセスするための裏口)がある可能性があり、ある時点でコントロールが切り替わって中国の指令で動き出すことだってあり得る。家庭や工場にそういうロボットを入れますか、という話になる」と述べる。
平氏は日本単体での対中競争には懐疑的だ。「日本単体で突っ込んでも中国には勝てないと思うが、日米でWin-Winで組めるのが一つの勝ち筋だ」とし、「アンソロピックの創業者と話したところ、アメリカが作ったAIを中国側が学習に利用することへの対策(上流での対策)によって中国AIの進化はスピードダウンする、また自律的に自己改良するリカーシブ・セルフ・インプルーブメントの分野では米国企業が大きく先行しており1年後には差がつく、と言っていた。米国と組んでいる日本にとって、フィジカル分野でも優位に立てる可能性がある」と語る。
また、ロボットのセキュリティ上の問題について増岡氏は補足する。「UniPwnという脆弱性が発見された事例では、上場間近だった企業が問題を黙殺しようとしたが、ハッキング経路からバックドアの存在が明らかになった」と述べる。
日本製品への信頼感という観点から平氏は、「世界からメイドインジャパンへの安心感・信頼感は半端ない。情報を抜かない、悪いことをしない日本のAIを使いたいというニーズはロボットにもあるのではないか」と語る。
日本の「繊細さ」を強みとして活かせるかという議論では、平氏が「大技は中国が得意かもしれないが、指先が器用で服を丁寧に畳んでタンスにしまうような作業は日本に期待されている。中国のセンサーが指先と中央部だけをざっくり感知するのに対し、日本は面で感知するセンサーも持っており、家庭の中で日本的な配慮ができて細かい作業ができる、そういう分野に日本の強みを生かせるのではないか」と述べる。
哲学研究者の森脇透青氏は、「追いつく・追い越すという発想よりも、フィジカルAIをこんなことに使えたのかという発明にお金をかけてほしい。温水洗浄便座を生んだ国だからこそ、誰も思いつかないような使い方に挑戦してほしい」と提言する。EXIT・兼近大樹も「日本の漫画・アニメというコンテンツの力で戦えると思う。政府が支援する分野と、民間が独自に展開する分野の両軸で進められるのではないか」と述べ、フィジカルAIが日本の文化的強みと結びつくことへの期待を示した。
(『ABEMA Prime』より)

