■政府が検討する大規模な現金給付とその懸念
こうした少子化危機に対し、韓国政府は来年7月から、第一子を出産した世帯に1000万ウォン(約110万円)、第二子に1200万ウォン(約140万円)、第三子以降には1500万ウォン(約170万円)を現金で支給する大規模な給付策を検討している。
韓国で2歳の男の子を育てるANNソウル支局の岩本京子支局長によると、現地では「制度が施行されれば2人目の出産を検討したい」と前向きに捉える声がある。その一方で、来年7月1日以降に生まれた子どものみに適用されるため、「6月30日生まれの場合はもらえないのか」と公平性の観点から強い反発の声も上がっているという。
金氏は、こうした金銭的支援を増やすこと自体は否定しないものの、現金給付だけでは出生率の大幅な改善は期待できないと指摘する。「まず韓国政府が実施すべきことは雇用の安定。主に結婚した後の子育て世代に政策が集中している。実際の問題は住宅・仕事の問題などで、結婚できない若者がいっぱいいること。今まだ結婚していない若者への支援を拡大して、彼らが結婚できるような環境を作る、そういう支援を拡大すべきではないか」。
中室氏も、金氏の意見に強く同意する。「これは日本にも共通する課題。子どものいる世帯は比較的所得が高いことが多いが、子育て政策や少子化対策はすでに子どもがいる世帯に対して政策が集中しがち。しかし、今子どもを持てずに困難な状態にある若い人たちが、どうすれば子どもを持ちたいと思えるようになるか、そこにしっかり政策を対応させていくことが大切」。
さらに、現金給付は世帯間の格差を広げる恐れもあるという。「裕福な家庭は給付金をすべて教育費に回すかもしれないが、経済的に苦しい家庭は生活費や住居費に充てざるを得ないので、格差が開いていくことになる」。
そのため、子育て対策や少子化対策において「国は一律の現金給付ではなく、学校教育の質を高めることや、親が利用できる質の高い教育サービスの提供などにしっかりと投資すべきだ」と提言した。
「支出競争」の激化と子どもを追い込む親たち
