■当事者たちの主張と錯綜する現場
発覚から半年が経った2025年12月、取材班は違法伐採の現場へ初めて入った。北海道から停止勧告を受け、工事はすべて止まったまま。作業員の姿はなく、まだ土台だけのものと、ほぼ組みあがった鉄筋コンクリート造りの2階建て別荘が残されている。
「(Q.別荘の窓は四方にある?)基本的に全部に窓を付けている。(Q.景色を楽しめるように?)そうです。この景色が大好きなので」(中国人建築主の代理人)
土地の広さはそれぞれおよそ150坪で、どちらも中国人が建築しているものだ。窓を入れる前に工事が停まったため、室内に雨風が入らないよう一部はブルーシートで覆われている。
「日本が大好きなので、特に北海道。こういうきれいな景色に憧れる。景色が美しいところで建てたいなという気持ちでここにした。オーナーさん(建築主)は何も悪いことをしていないので、早く建てたいですよね」(中国人建築主の代理人)
なぜ、違法伐採が行われたのか。不動産会社J社の中国人社長が初めてテレビカメラの取材に応じた。
「私の気持ちは本当にごめんなさい。オーナーに(土地を)売って、ダメな建設会社を紹介して、これは自分の責任。今回心配をかけた方、ごめんなさい。本当にそれしか言えない」(不動産会社J社社長)
J社の社長は、別荘の建築を委託した札幌の建設会社T社が、発注した面積を大幅に超える違法な伐採を勝手に行ったと主張する。
「現場行かれたじゃないですか。(木を)切っているところは意味がない。全く意味のないところを切っている。私も何でそんなに切るのかわからない。彼らは伐採してお金をもらうじゃないですか。(J社に)請求書が来る。お金を払う。そこだと思った。T社は私もオーナーも政府(道や町)もだました」
J社社長の主張に対し、T社は「全ての伐採はあくまでJ社の社長の指示の下で行った」としたうえで「伐採届はJ社が提出していると考え、提出していなかった」と話している。
羊蹄山麓の土地を購入した経緯について、J社社長は「最初は10年前、友人から紹介されて、こういう土地はどうですかって。原野商法の被害者たちが安くて売れない土地を買ってくれないかっていう話」と説明する。
1970年代、多くのチラシが出回った。当時、羊蹄山周辺は「新幹線の開通で将来価値が上がる」などとうたい、高く売りつける原野商法の舞台となり、細かく区分けされて売り出された。
社長は原野商法の被害者らを救うつもりで土地の買い取りを続けた結果、事業ができるほどの広さになったと話す。その後、この土地に興味を示したのが中国に住む友人たちだった。
J社社長は「このお客さん2人は友人。写真を見せたら『きれい』と言って、冬の間現地に来て『ここに家を建てたい』と。森がたくさんあって『できれば木を切らないでください』と(T社に)ちゃんと言いました。最初からお金を20〜30億円払って『違反建築を造ってください』と、そういう趣味の人なんていない。みんなこういう良い夢を持って、北海道に投資する。このお金は日本の融資を1円も使っていない。自分たちの資金を使っている」と説明した。
一連の問題を受け、J社は羊蹄山麓のほとんどの土地を手放したという。建築途中の2棟については今後工事を再開し完成させたい意向を示している。
政府は外国人による不動産取得の実態を把握するため、森林などを取得する際の届け出に国籍の登録を義務付ける方針だ。
土地制度に詳しい慶応義塾大学・大学院法務研究科の松尾弘教授は「今回の問題で外国人が土地を所有し違法行為をしたということが、外国人はルールに従わないことをやっているのではないかという疑心暗鬼を生んだ。土地所有者の国籍も明らかにすることになったが、それは外国人の土地所有を規制するという方向に直ちに結び付くわけではなくて、情報はしっかり把握しているから皆さん安心してくださいということにつなげていくべきものだと思う」と指摘。
その上で「ただ場所によって(違法行為に)気が付くのが遅くなることはあると思う。国が全部監視するのは不可能だと思うので、地域の人たちが関与せざるを得ない。関心を持って、将来の土地利用計画も含めて考える意識を高めるということが不可欠」との見方を示した。
(HTB北海道テレビ放送制作 テレメンタリー『伐採の代償〜北海道の“外国”で生まれた分断の火種〜』より)
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