こんにちは。青木真也です。自分のことをプロスポーツ選手ではなく、フリーターだと思っております。お仕事、頂けたらなんでもやります。生意気言いません。格闘技選手として活動していますと、『格闘技選手って儲かるの』といった主旨のことを聞かれる時があります。『儲かる』という言葉自体が曖昧で広義な言葉なので毎回、返答に困っております。

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 そもそも、『儲かるのか』という質問自体が失礼だともとれます。「給料いくらですか」と聞ける関係性の人が自分の周りにどれほどいるでしょうか。一喝したいのはやまやまなのですが、気が弱いので出来ません。誤解されていますが気は弱いです。

 他のスポーツと比較しての『儲かる』話になると日本プロ野球ならば年俸5億円、6億円の選手がいて足下におよびません。それがメジャーリーグになれば、さらに跳ね上がります。サッカーボクシングの一部もとてつもない収入を得ます。格闘技と比べたら天と地との差があります。そこを基準にするならば、「儲からない」ということになります。

 ですが他のスポーツと比較するのは、僕はナンセンスでだと思っています。競技人口も市場規模も違います。よって単純な比較は難しいです。ですが金額という誰もが分かりやすいモノサシで圧倒的に負けているのは、プロ選手として悔しく思っています。プロ格闘技選手をしてからはずっと他のスポーツに対するコンプレックスを持っています。野球選手と劣らないことをやっているという自負があるのです。

 そんなことを言っても、格闘技は儲からないし好きじゃないとできないというのは実体験としてあります。大前提として、儲からなくて好きじゃないとできない格闘技でも工夫次第でそれなりに成り立たせることはできます。

 それは経費を極力減らす作戦。例えるなら10万円で受けた仕事に対して個々の専門を(ライターやカメラマンなどなど)雇うと取り分は減りますが企画から全てを自分で行うことで取り分がまるまる自分のものになります。

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◆収入をまるまる自分の取り分にするためのシンプルな方法

 格闘技で言えばマネジメントやトレーナーなどに外注せずに自分でできる部分は極力、自分でやることで出費を少なくする事が出来ます。僕はマネジメントは入れていませんし練習環境もシンガポールの所属ジムがあるので掛かっていません。自分で出来ることは極力自分でするようにして、出費を抑えてやっています。

 この貧乏性は自分のキャリア初期にファイトマネーが本当に少なかった時期(一桁万円時代)の感覚が抜けていません。プロ選手と名のつく、憧れの対象となる職業をしている人間がする話ではないのかもしれませんが、未だにミネラルウォーターを買うのにも抵抗があるほどに貧乏性が染み付いています。恥ずかしいですが、貧しかった時代の感覚が染み付いていて、自分の生活を大きくできません。この感覚は収入が増えても時間が経っても抜けることがなく、風呂に入っても治療しても治りません。

 格闘技は儲からない。そこまでの名誉も無い。でも格闘技選手を33歳までやっています。33歳になって異国の地でずたぼろに殴られてノックアウト負けをしても格闘技を辞めようとは思いません。

 カネは大切です。父として家族が暮らしていく分のカネは何が何でも稼がねばなりません。しかし家族の生活が成り立つ前提があるならば好きなことをやるのは『生き甲斐』として大切だと考えています。格闘技は儲からないけども工夫次第で成り立たせることはできます。

 好きなことをしないと生きていけないのならば大きく儲からなくても好きなことをして生きていく――。これは、生きていく手段としてアリだと思います。稼ぐことから逃げるわけでなく生き甲斐から逃げるわけでなく必死に生きていく。

 全ての人が生きる為に日々厳しい闘いをしています。個々に厳しい闘いがあって自身のことだけが厳しい闘いではないです。周りを気にせず、日々コツコツと持ち場で頑張りましょう。人は皆、闘っています。僕もあなたも。

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※追伸

 安定した仕事、カネがあってやりがいがないのもツライ。やりがいがあって安定した仕事、カネがないのもツライ。

文/青木真也(格闘技選手・フリーター)

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