将棋棋士の加藤一二三九段(77)が6月30日、東京都渋谷区の将棋会館で引退会見を行った。最近ではテレビの情報、バラエティー番組に引っ張りだこで、すっかり“ひふみん”のイメージが定着しているが、将棋界の後輩たちから見れば、やはり名人にもなった偉大な「加藤一二三先生」だ。最年長勝利記録(77歳0カ月)、通算対局数(2505局)など、数々の記録を打ちたてた加藤九段への思いを後輩棋士たちに聞いた。
引退直後には、将棋連盟会長の佐藤康光九段(47)、羽生善治三冠(46)、らのコメントが発表された。上位リーグで戦った棋士たちとはまた違った思いを、若手棋士たちは持っている。上村亘四段(30)は、加藤九段と5回対戦し「かなり恵まれました」と切り出した。「印象的だったのは最初の対局です。序盤は加藤先生が優勢で、途中で私が1回逆転しそうになりました。普通の流れなら逆転するはずですが、底力を見せられまして」。70代ながら夜戦になっても闘志は衰えず、結果は加藤九段の勝利で終わった。「どれだけ力があるんだろうと。対局が終わった後、恐ろしい気持ちになったのをよく覚えています」と、気圧された体験を振り返った。