一躍「時の人」になった男である。今年7月、佐々木勇気六段(当時五段)は歴代新記録の公式戦29連勝を樹立した直後の藤井聡太四段と竜王戦決勝トーナメント2回戦で激突し、完勝した。フィーバーに終止符を打つとともに「藤井四段に勝った男」として脚光を浴びるようになった。
 最新流行型の研究に自らの工夫や思想を投影しようとする独創家でありながら、どこか浪花節的な、あえて言えば昭和的な一面も持っているところが魅力でもある。「重圧は感じましたけど、私たちの世代の意地を見せたいと思っていたので壁になれたのは良かったと思います」。終局後に語った言葉も、22歳(現在は23歳)らしからぬ味わいがある。 昨年の「将棋年鑑」のアンケート欄で「一生お金に困らないとしたら」との質問事項に対し「100万円分の花束を買う」と答えたロマンティストでもある。