中学生棋士の巻き起こした大ブームが、若手プロ棋士の活性化につながっている。デビュー以来29連勝の大記録を樹立した藤井聡太四段(15)の登場で、日本中に将棋ブームが巻き起こったが、藤井四段に影響を受けたのはファン側だけではない。これまで「若手」と呼ばれていた20代の棋士たちが、超強力な後輩の出現にこれまで感じたことのない刺激と焦りを受けている。若手の1人、八代弥六段(23)は「とても年下の棋士が急に出てきてびっくりした」と思いを明かした。
羽生善治棋聖(47)を中心とした「羽生世代」など、打倒ベテラン棋士を誓って日々努力を重ねる若手棋士たちにとっては、まさに青天の霹靂だ。20代前半から半ばの棋士たちは、プロデビューから数年経過し、徐々にプロ棋士として成熟し始めたところ。そんなところに、いきなり当時14歳の天才棋士が登場したのだから、驚くのも無理はない。八代六段は「自分も1歳、2歳下はいるんですが、とても年下の棋士が出てきてびっくりしましたね。うれしい反面、初めて後輩に焦りというか、そういう気持ちがわきました」と、複雑な心境を明かした。
多くの後輩を持つベテラン棋士ならまだしも、まだ下から数えた方が早い若手棋士にとって、初めて感じる「下からの突き上げ」は、未体験のプレッシャーだ。八代六段自身は藤井四段と対戦経験はないが、「年上の先輩に負けるならまだしも、年下に負けるとは夢にも思わない若手もいると思います」と、心情を代弁した。連勝記録を止めた佐々木勇気六段(23)とは同年代で交流もあるが「藤井四段が相手と意気込んでいましたからね。自分もいざ当たるとなったら、結構意識はすると思いますよ」と語った。
ブームの到来で、将棋のプロ棋士として注目をされることを意識する機会もあったという。「他の棋士とタクシーに乗っていた時、運転手の方から話しかけられて。『失礼ですが、将棋の棋士の方ですか?』と。今までそんなことなかったんですけどね」とほほ笑んだ。身近なところで世間の目が将棋に向いていることを感じ、より将棋に励むきっかけにもなった。将棋の世界では伸び盛りと言われる20代。“藤井効果”で成長が促進されれば、ハイレベルな対局が一層増えることにつながりそうだ。
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