人気、実力、実績、人望。棋士が…というより人間が望むことの多くを兼ね揃えた棋士といえるだろう。森内俊之九段。47歳。十八世名人資格保持者である。後年になって、2017年は藤井聡太四段が歴代最多の29連勝を達成した年として語り継がれていくことになるだろうが、往年のファンの中には、森内が大きな決断を下した年として記憶していく人もいるだろう。
3月、順位戦A級からB級1組への初めての陥落が決まっていた森内は、フリークラスへの転出を自ら宣言した。フリークラスとは、順位戦への参加資格を持たない階級である。 たった3年前、竜王・名人の2大タイトルを制し、将棋大賞の最優秀棋士賞を受賞した大棋士が名人に復位する可能性を自ら断ったのだ。