プロ野球のファームは「イースタン・リーグ」「ウエスタン・リーグ」と本拠地によって東西に分かれ、競走馬は「関東馬」「関西馬」と普段トレーニングする場所によって区分けされている。また、映画化された関ケ原の戦いでも、徳川家康率いる東軍と石田三成を中心とした西軍の戦いと言われることがある。このように日本では東と西に分けて比べる、競わせるものが割と多い。日本将棋連盟でも関東所属の棋士と関西所属の棋士に分かれている。将棋界の東西はどのように分かれているのか、また、現在はどのように関西の棋士が頑張っているのか。

◆現在は居住地域などによって決定
昭和の始めのころなどは東西の対立があったと言われる将棋界だが、現在は日本将棋連盟という公益社団法人の下で1つになっている。日本将棋連盟は関東(将棋会館)と関西(関西将棋会館)の2つに拠点があり、棋士や棋士の卵の奨励会員は、住居などの生活範囲に合わせて関東か関西を選ぶことになっている。
◆関東と関西で区分けしていること
生活拠点が違うということが根拠となる違いが多いだろう。養成機関である奨励会については、二段以下の奨励会員は関東と関西で分かれた上でしのぎを削っている。プロ棋士に最も近い三段は、すべての三段の奨励会員で争うリーグ戦があるため、東西で分かれることはない。また、予備予選があるような棋戦については、早い段階では関東と関西に分かれて対局が組まれることが多い。160人ほどいる現役棋士の交通費を無視することもできないだろう。
◆関東と関西の大舞台での戦い
この1年のタイトル戦実績を見てみよう。まず名人戦。佐藤天彦名人は福岡出身。奨励会の途中までは関西所属だった。挑戦した稲葉陽八段は今も関西所属だ。
王位戦は、岡山県岡山市出身の菅井竜也王位が羽生善治竜王からタイトル奪取。棋聖戦は羽生竜王から奪取こそならなかったものの、奈良出身の24歳・斎藤慎太郎七段が善戦した。
棋王戦は千田翔太六段が渡辺明棋王に惜敗、王将戦は郷田真隆九段から久保利明王将がタイトルを奪取した。
王位戦は、中村太地王座が羽生竜王から奪取し、初のタイトル獲得。そして先日まで行われた竜王戦では、羽生善治棋聖が渡辺明竜王を破り、タイトル奪取とともに前人未踏の「永世七冠」を達成した。
今期から主要タイトル戦に含まれる叡王戦を除いた7大タイトルでのこの1年のタイトル戦をまとめると、関東と関西の戦いになったのは5棋戦(残りは関東と関東の対戦)。2棋戦ではタイトルを奪取していることを考えれば、関西勢大躍進とも言えるだろう。
他に、名人位の挑戦者を決める順位戦のA級では関西の豊島将之八段がリーグトップを突っ走り、翌年のA級を狙うB級1組の無敗者も関西の糸谷哲郎八段だ。そして、今棋界で最も有名とも言える藤井聡太四段も関西。
ここまで名前の挙がった関西の棋士は久保王将を除いて10代、20代。関西の若手が頑張っている姿が見て取れる。自分の近いエリアの棋士を応援するようにしてみると、また対局観戦が面白くなるだろう。【奥野大児】
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