場所前から横綱・白鵬、稀勢の里の両横綱の出場が危ぶまれ、先場所は横綱陣の中で唯一、皆勤して11勝をマークした鶴竜も右手の負傷の影響で調整の遅れが伝えられている。先場所、平幕優勝を果たし、関脇に復帰した栃ノ心は出稽古に来た大関豪栄道と互角の稽古をこなすなど、好調が報じられていたが、場所を直前に控えた稽古で左足を負傷。治療のため一時帰京したのはやや気がかりだ。
3横綱が揃って不調。先場所の覇者のケガも気になるところで、優勝争いは混とんとした様相を呈してきた。そんな中、大関高安は連日、意欲的に稽古に励んでいる。
初場所は14勝で優勝した栃ノ心に次いで12勝を挙げた。特に後半は右腕を固めながら相手に思い切り体当たりする強烈なかち上げを武器に怒涛の8連勝をマークするなど、大関昇進以降では自己ベストの勝ち星であった。横綱、大関陣の中でただ一人、賜盃を抱いた経験こそないが、その実力はすでに十分だ。
「次こそは自分が優勝したいという自信を持って土俵に上がりたいと思います」とジョージア出身30歳の平幕優勝に大きな刺激を受けている。初賜盃を手にすれば、綱取りのチャンスも同時に手繰り寄せることになるが、機はすでに熟していると言っていいだろう。
3月5日と6日に行われた二所一門の連合稽古では、玉鷲の突き押しに上体が浮き、後退する場面も目立ったが、2日間で42番と精力的に番数をこなした。「調子が良くても悪くても稽古をするしかない。もっとやりたい。まだまだ足りないんじゃないですか」と場所直前の追い込みに懸ける。
協会の看板力士として、2場所連続で下位力士に優勝をさらわれるわけにはいかない。「(初優勝に向けて)強い気持ちでやります」と脂の乗り切った28歳の大関は大きな目標に向けて意気込んでいる。
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