“荒れる春場所”と言われるが、今年は場所前からすでに風雲急を告げている。5場所連続休場から復帰を目指していた稀勢の里は大阪入り後も調整に励んでいたが、師匠の田子ノ浦親方(元幕内・隆の鶴)は3月8日、左胸のケガが完治してないことから、本人に代わって今場所を休場することを明かした。また、出場か否か、明言を避けてきた白鵬の休場も取組編成が開かれた9日朝、ギリギリになって発表された。今場所は横綱北の湖を抜いて横綱在位が史上単独1位となる64場所目であったが、先場所に続き自身初の2場所連続休場となってしまった。

 3横綱で唯一、出場となる鶴竜も手負いの身だ。先場所千秋楽で右手薬指を脱臼。右でまわしを取っても力が入らず調整遅れは否めない。進退が懸かっていた先場所は終盤こそ大失速したものの、初日から10日目までは力強い相撲で全勝。復活を強く印象づけたが、今場所は蓋を開けてみなければ分からない状態だ。

 先場所は平幕で初優勝を果たした栃ノ心だが、もはやその強さはフロックでも何でもない。場所直前の稽古で左足を痛め、治療のため一時、帰京したが、師匠の春日野親方(元関脇・栃乃和歌)によれば大事には至らなかったよう。関脇に返り咲いた今場所で2ケタ白星を挙げれば、夏場所で大関取りとなる情勢だ。今の実力からすれば、その可能性は十分。もし、ハイレベルの成績での連覇となれば、相撲内容とその時のムード次第では場所後に一気に大関昇進となるかもしれない。

 一方で、上位はそれを許すわけにはいかない。先場所は大関昇進以降、自己ベストの12勝をマークした高安も、有力な優勝候補と言っていいだろう。ただし、二所一門連合稽古では玉鷲に立ち合いから圧倒されるなど分が悪く、場所前の稽古内容は決していいとは言えなかった。破壊力十分のかち上げも腰高な立ち合いでは威力も半減。そのあたりをどこまで修正できるかがポイントとなりそうだ。もう1人の大関、豪栄道にも奮起を期待したい。地元大阪の声援の後押しはプラスアルファの力をもたらすに違いない。

 5場所連続で関脇をキープしている御嶽海、2場所連続10勝で2年半ぶりに三役に復帰した逸ノ城も優勝のカギを握りそうな存在だ。実績十分の両者だけに、栃ノ心の優勝には大いに刺激を受けているだろう。

 誰が優勝するのか皆目、見当がつかない今場所。3横綱が揃って不振の今はちょうど端境期なのかもしれない。そんな“戦乱の世”を制した者が、やがて新しい時代の扉を開けるのである。

(C)AbemaTV

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