俊足巧打の内野手として活躍し「スーパーカートリオ」の1人に数えられた男が、今やYouTuberになっていた。主に大洋（横浜）で活躍したプロ野球解説者の高木豊氏（59）は、今年4月に自身の名前でYouTube内にチャンネルと開設した。登録者数は8月20日現在で約2万3000人。球界の裏話から、他のOB選手を招いてのゲストトーク、プロ選手でしか知りえない野球の深い知識など、多数の動画を公開している。「楽しいことをしたいなと。野球の裏側を、もっとみんなに知ってもらいたかったんです」と話す高木氏に、チャンネル開設の詳しい動機を聞いた。
現役引退後、プロ野球や日本代表のコーチも務めた高木氏だが、もともと芸能活動にも積極的だった。そして今年、次のベースと見定めてか、一気に走り出したのがYouTuberへの道だ。「おもしろ楽しく、が基本ですね。テレビだとどうしても縛りがあるので。自由に発信がしたかったんです」と、なかなかテレビで実現するのは難しそうな企画を、現役時代のヒットのように、コンスタントに出し続けている。「やっていて感じたものだと、何がウケるかというと、プロの専門的なこと。プロのサインってこういうことなんだよとか、ティーバッティングではこういう工夫をしているとか。つまりは、プロじゃないとわからないってことなんでしょうね」と、手応えをつかんでいる。
単に楽しむだけではない。周りにいる“埋もれた逸材”を、世に輩出する狙いもある。「自分が発信したいというのもありますが、キャラクターが死んじゃっている人が、野球界でたくさんいまして。こういう人たちがグループ単位で発信できたら、何かの足しになるんじゃないかと。だから僕が先駆者をしているわけです」。イメージするのは、テレビの主音声よりくだけた口調が愛される副音声のさらに斜め上。「自分を隠しているのか、めちゃめちゃ楽しいけど、それが出せないやつがたくさんいるんでね。おもしろく伝えられる術はたくさんあると思います」と、YouTubeという場で魅力を開花、解放させるつもりだ。
始めた直後は、やはり「お金のためか、という色眼鏡で見ている人はたくさんいるだろうと感じた」という。それでも、本来の目的はそうでなくても「当たれば稼いでやろうと思っていますよ」と、気合も見せた。まだ動画にはなっていないが、チャンネル開設当時から温めている「草野球解説」も、「優しいエンジェル解説と、反対のデビル解説をやろうと思っています」と、ひと工夫凝らすつもりだ。
ブログ、Twitter、Instagramなどを活用し、プロ野球選手であっても自己プロデュースをするようになった時代。高木氏のYouTubeが一発長打を放てば、今後の野球選手たちのライフスタイルにも大きな影響を与えるかもしれない。
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