女流プロ雀士を牽引してきたのは、間違いなく二階堂姉妹である。妹・亜樹は1999年、当時史上最年少18歳でプロ入り。姉・瑠美は2000年に20歳でプロ入り。美人姉妹ということもあり、デビュー当時からマスコミに注目されていた。その生き様は、映画『女流闘牌伝 aki-アキ-』として、2017年に公開されたほど波乱万丈なものだった。そして亜樹も瑠美も、結婚と産休を公表し、リーグ戦への復帰を果たした。それまではファンの手前、オープンにしづらかったプライベートを公表する姿勢に共感した女流プロが多いのも事実である。
そんなカリスマ姉妹の妹、二階堂亜樹は、株式会社テレビ朝日のチーム「EX風林火山(イーエックスフウリンカザン)」に堂々ドラフト1位指名された。「元々は自分があり、日本プロ麻雀連盟があり、応援してくれるファンの方がいてくれた。そして今回、テレビ朝日さんにはドラフトで選んで頂いた感謝の気持ちがある。だからMリーグを楽しみにしてくれている視聴者さんも含め、背負っているものが増えたという感覚です」と初代Mリーガーとして、未知なる大きな期待をも背負い戦っていく。
チームメンバーである滝沢和典と勝又健志は、同じ日本プロ麻雀連盟に所属している。「テレビ朝日のマネージャーから、誰をリーダーとするのか話し合って決めようと提案があったんです。でも結論から言えば決まらなかった」と破顔一笑した。その理由は、年齢は滝沢が一番上で、次が勝又、次が亜樹。プロ歴だと亜樹が一番上で、次が滝沢、次が勝又。現時点のプロリーグでは勝又がA1、亜樹がA2、滝沢がC1。「みんな一番上の部分はあるんですが、誰が抜きん出てというのがない。じゃあ、上もなく下もなくチームワークで戦おう」と最終的には落ち着いたと気心も知れているようだ。
ドラフト以降、あまり見たことがなかった他団体Mリーガーの映像対局を見て、情報収集することに時間を割いている。しかしそこから得た情報に関しては、チーム内で共有することはないという。「自分の麻雀感や相手に対する印象は、合致するものではない。しかも相手が誰に対しても同じように打ってくるとは限らないので、余計な情報はかえって言わない方がいい」と考えているからだ。
ただひとつだけ心に決めていることがある。「相手に対して弱気な姿勢は絶対に見せてはいけないなと思っています。指名を受けている他チームの18名は、そういったところ見抜く力も非常に高いと思うので、隙を見せたら必ず付け込まれる。今回は特に意識をして、弱気な姿勢が出ないようにしないといけない」。
亜樹がライバル視しているチームは「U-NEXT Pirates(ユーネクストパイレーツ)」だ。「ツイッター上では前評判が高く、優勝候補と言われているようなので、そこより順位は上で終わりたい。うちのチームは、前評判は高くないけど、バランスの取れたいいチームなので、総合力では上位に入れると思う。ただ私とタッキー(滝沢)のせいで、いまひとつ勝ち切れないイメージがついちゃっているみたい。勝又先生には申し訳ないんですけど」と、母になってもデビュー当時から変わらぬ笑顔を見せた。
亜樹の最大の特長は抜群の安定感だ。ラス率も放銃率も低いのだが、攻める時の精度はすこぶる高い。「頭脳と体を使っていろんなことを体現出来る頭脳スポーツだと思っているので、それを体現する力をプロがどれだけ持っているのか。そこを見せられるのかが重要なのかな」と、単なる勝敗だけではなく、冷静な判断力と内に秘めた情熱をも対局で表現する覚悟だ。
「疾如風、徐如林、侵掠如火、不動如山」。群雄割拠のMリーグを、孫子の兵法の極意を持って「EX風林火山」は、10月2日に開幕戦に挑む。【福山純生(雀聖アワー)】
◆二階堂亜樹(にかいどう・あき)1981年11月15日、神奈川県生まれ。O型。日本プロ麻雀連盟所属。主な獲得タイトルは第3期プロクイーン、第3回モンド21王座決定戦、第2、3期女流桜花、麻雀最強戦2014女流プロ代表決定戦他。著書は「二階堂亜樹の勝てる麻雀の基本」「明日は、今日より強くなる 女流雀士二階堂姉妹の流儀」(二階堂瑠美プロとの共著)他。愛称は「卓上の舞姫」。
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