14日、アメリカ軍普天間基地の移設に伴う辺野古への土砂投入作業が始まった。翌15日と16日に行われたANNの世論調査では工事を進めることについて、「良いと思う」が32%、「良いと思わない」が55%だった。
沖縄では来年2月24日に辺野古の移設の賛否を問う県民投票を予定しており、このタイミングでの作業開始に玉城デニー知事は「既成事実を積み重ね、県民を諦めさせようとしている」「工事を強行すればするほど県民の怒りはますます燃え上がるということを認識すべきだ」と政府を厳しく批判。沖縄平和運動センターの山城博治議長も「いよいよ土砂が入るかと思うと身を切られるような思いがする」と述べた。
岩屋毅防衛大臣の「日米同盟のためではない。日本国民のためだ」という発言に、"日本国民の中に沖縄県民は入っているのか"という疑問の声も上がる中、反対の声は右翼からも。背中に「米国の正義を疑え!!」と書かれた上着をまとう東京の右翼団体「花瑛塾」の仲村之菊(みどり)さんは、座り込みには参加せず、1人で移設反対を訴え続ける。「何となく"憎き左翼"という感じで、辺野古で座り込みをしている人たちに暴力的なことを言ってしまったり、ヘイトスピーチをしてしまったり、という姿に右翼が段々加担してきたというのが実際だと思うので、基地の問題をやることに関して、本質を見ようよという努力を結構みんなに促してきたつもりだ」。
そんな中、ウーマンラッシュアワーの村本大輔がAbemaTV『AbemaPrime』で沖縄への熱い思いを訴えた。
「後輩の基地賛成派は"沖縄が戦っても勝てるわけはないし、選挙で基地反対ばっかり言っていても、雇用とか、他の問題は解決しない。だったらもう疲れたし、お金もらってやろうよ。仲井眞前知事は頑張って国からもらえる補償金の額をつり上げてOKした"と言っていた。でも、僕にはお金をもらわずに戦っているデニーさんが侍みたいに見える。だから選挙でも応援してきた。佐喜真陣営は小泉進次郎さんとか、創価学会や公明党を集めて戦って、ずるいな、デニーさん頑張れと思ってきた。大差でデニーさんが勝ったので、これで沖縄が変わるぞと。基地がなくなるぞと思った」と話す村本。15日には沖縄で急遽「独演会」を開いたという。
「もともと沖縄花月という吉本の劇場で出番があったが、行く前日に土砂の投入があったので、笑いで何かできることはないかと思って、急遽独演会を開いた。カミングアウトがテーマで、なぜLGBTの人たちがカミングアウトという言葉を使うんだろう、使わせている世の中はおかしいんじゃないかという話をする中で、沖縄の話をした。最後に"安倍内閣は沖縄に寄り添いたいと言ったので、僕は笑いで沖縄に寄り添いたい。そんなに頑張らないで。無理しない程度に"と言ったら、その瞬間にお客さんがドッと泣き出した。ある女性は"カミングアウトする。沖縄防衛局で働いている。個人としてずっとモヤモヤしているものがあって、話を聞きに来た"と声を掛けてきた。ほかにも自衛官や、アメリカ人と日本人のご夫婦の方もいらっしゃった」。
沖縄と東京を行き来するうちに、双方の温度差も感じるという。
「沖縄の街で若者に話を聞いたら、"経済問題があるから早くお金を回さないと大変。すぐ埋め立ててほしい。座り込んでるおじいちゃんおばあちゃん迷惑だから"という男の子もいた。でも、自分のおじいちゃんがチビチリガマで死んでいたら…と考えると、リアルな想像ができると思う。そういう賛成派の若者とも一致したのは、基地を作らなくても経済を良くしてくれや、ということ。高速道路や電車を通すとか。地方創生とか言っているのに、基地を作らないとお金をくれないって何なんだよ、とみんな言っていた。沖縄の若者はこれほど関心があるのに、東京の若者はあれだけ税金が使われていても築地の問題に興味がない。また、ネット上には、"あそこに座り込みをしているヤツは日当をもらっている沖縄以外の人が多い"というような言い方をする人もいる。なぜ、声をあげている沖縄の人の声に耳を貸さずに、そうではないところを見ようとしているのか。評論家、専門家の方たちの中にはデマを流してしまう人もいるし、それを信じる人もいる。そういうこともあって、沖縄がクタクタになっている」。
村本の議論を受けて、評論家の宇野常寛氏は「大前提として、安全保障、憲法の問題を自分探し的に消費して、右か左かのどっちかが正しいと思いこみ、複雑な世の中から目をそらすことで安心してるかわいそうな人たちがいる。沖縄の基地問題も、そういった人たちの格好のオモチャになっている。SNSで誰でも発信できる世の中にならなかったら、沖縄に関してこんなに間違った情報やフェイクニュースが跋扈することはなかった。これはインターネットの罪だと思う」と指摘。その上で、次のように訴えた。
「現実的に考えて、今の日本が軍事的に独立できるとは思えない。僕は安倍改憲案は良くないと思っているが、しかるべき形で改正し、自衛隊も位置づけ直して、外交戦略も中期的に見直していって、地位協定を改善する手続きを踏んで、今よりも自主防衛の方にベクトルを寄せた方がいいと思っている。その上で初めて在日米軍基地が縮小できるのではないか。しかし現時点では難しい。だから沖縄だけに押し付けるのではなく、日本の中心で、富裕層が集まって、守られている人たちが多い東京都千代田区や世田谷区に作るべきだと思っている。属国であることを直視するためにも、そのくらいのことをやるべきだと思う。もちろん純軍事的に見て、関東平野にこれ以上基地があってもどうしようもないと言われるだろうが、それぐらいの覚悟を持って交渉しないと、アメリカに日本人の覚悟は伝わらないと思う。原発も米軍基地も東京に移すぐらいの議論をしないと、撤廃論を言ってはいけないと思っている」。
さらに宇野氏は反対派の課題も指摘する。
「基地がないと食えない。原発がないと食えない。これは事実だ。だからこそ、基地に頼らない経済、原発に頼らない経済を持続的に育てていこう、新しい産業を起こそうという議論がセットじゃないと意味がない。"基地がないと食えないが、でも基地は嫌だ"では一向に議論は進まない。そうではなくて、観光でもいいし、情報産業でもいいし、農業でも何でもいいが、30年、50年という持続可能な産業の育成を考えなければ意味がない。これは沖縄だけの問題ではない。地方がちゃんと自立できるように、中央から税金や基地利権、原発利権を流し込む田中角栄的な国土開発がなくてもやっていけるような、自立した経済を作るべきだし、ダウンサイズもしていくべきだ」。
また、作家の乙武洋匡氏は「僕らは多数決主義と民主主義とを同じものだと勘違いしてしまう。多数決は7対3なら7の方の意見を100%優先させるが、民主主義は3の意見も聞き入れながら全体の最適値を見つけ出して、そこに着地することを決める権利を7取った方が持っている、ということだと思う。今、沖縄のことをはじめ多くの問題が多数決で決まってしまっている。そこに少数派の意見はどのくらい取り入れているのかとと思うことがある」と話していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
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