第72代横綱・稀勢の里の引退にはじまり、横綱・鶴竜（井筒）の休場、さらに大関陣の不振。そんな中、尻上がりに調子を上げ、本来の姿を取り戻したかのように思われた横綱・白鵬（宮城野）が、十一日目に小結・御嶽海（出羽海）に敗れるとまさかの3連敗。十三日目には優勝の行方を大きく左右する一番で、関脇・貴景勝（千賀ノ浦）に完敗した。鋭い突き落としを受けて前のめりになり、呆気なく土俵に両手をつく様子は白鵬らしからぬ姿だった。
25日にAbemaTVで大相撲初場所十三日目の解説を務めた元関脇・北勝力の谷川親方は、新関脇の場所でも臆することなく活躍を続ける貴景勝について問われると「（新関脇で勝ち続けることは）大変ですし、二場所連続でこれだけ勝ってくるということは、自分より番付が下の力士とは実力が違うということの表れ。まず何よりも、貴景勝はその“殻を破った”。そこが凄い」と感嘆した。
また、好調の要因については「今場所の貴景勝は自分の体勢が崩れない。前傾姿勢が崩れないというのは、稽古がしっかりできている証拠。自分の意識どおりの動きが土俵上で出せている。さらに相手の力士は組みたいところだが、それをさせないというのが素晴らしい。得意の突き押しに関しても、下から下から、自分の身長の低さを武器にしている」と続けると、3敗で並んだ白鵬とともに、２敗で単独トップの関脇・玉鷲（片男波）を追う展開について「今場所も優勝すれば本物」と期待を寄せた。
その一方、白鵬まさかの３連敗で混沌とした優勝争い。「元横綱・稀勢の里の引退もあった今場所。新しい力、新しい世代の力士たちの活躍が期待されている。そんなムードが国技館の中にある」と実況を務めた清野茂樹アナウンサーに話を向けられると、「白鵬は強いけど、周りの力士も強くなってきている」と応じた谷川親方。しかし、「世代交代の波が押し寄せているのか」と清野氏に意見を求められると「世代交代は白鵬に失礼。まだまだ白鵬も強い」と話し、“世代交代”については否定した。
その白鵬を破った貴景勝の十四日目の相手は前頭四枚目・隠岐の海（八角）だが、この一番について「貴景勝としてはやりづらい」と指摘した谷川親方は「押し相撲を得意にする力士にとって、右も左も使える隠岐の海のようなタイプは絞れずに押しにくい。逆に隠岐の海は組むことができるのでは」と話し、自身が現役時代に押し相撲を得意とした経験を踏まええて取組の展開について言及し、貴景勝の苦戦を予想した。2敗で単独トップとなる玉鷲の相手は、前頭五枚目の碧山（春日野）。身長191cm、体重198kgと大きな体を生かした四つ相撲を得意とする相手だが、「今の玉鷲であれば、力負けはしない」と太鼓判を押した。そして十四日目となる今日、白鵬の休場が発表された。初場所の優勝争いはもちろん、世代交代の行方からも目が離せなくなってきた。
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