端正な顔立ちから女性ファンも多い都成竜馬五段(29)が「泥臭く戦う」とまで言って手にしたいのは、何よりも勝利だ。プロの棋士であれば当たり前のような話だが、同世代がタイトル戦で活躍する中、あわやプロの道を閉ざされるという26歳という年齢で四段昇段を果たした者からすれば、結果を渇望するのもよく分かる。プロとしては遅咲きとなる都成五段が、超早指し棋戦という舞台で自分の将棋、指し様に光を当てる。
小学5年生時に小学生名人となり、奨励会では中村太地七段(30)と同期。ただ、奨励会ではなかなか昇級できずに苦労した。三段リーグ在籍中に、若手プロと戦う新人王戦で優勝を果たし「奨励会員による一般棋戦初優勝」という快挙を成し遂げたが、2016年4月に四段となるまで、三段リーグを実に17期も経験。昇段を決めたリーグでは、負け越せば年齢規定で退会という、天国と地獄のような状況にも立たされていた。
プロ入り後の過去3年の成績を見ると、いずれも40局以上指し、勝率は6割超え。2017年度には0.7442という高勝率もマークし、通算でも92勝45敗、勝率.6715(2019年5月9日現在)とハイレベルの成績だ。ただ、平成生まれの棋士として初の名人位に王手をかけている豊島将之二冠(29)を筆頭に、前述の中村七段、竜王経験者の糸谷哲郎八段(30)ら、同年代の活躍ぶりが目覚しいだけに、はっきりとした成果を本人が欲し、周囲も求める。第1回AbemaTVトーナメントの覇者である藤井聡太七段(16)に対しては、5戦全敗。同じく5連敗だった近藤誠也六段(22)が6戦目にして初勝利を挙げたが、都成五段もいつまでも負け続けるわけにはいかない。
今回出場が決まったAbemaTVトーナメントは、持ち時間5分、1手指すごとに5秒増える特殊な超早指し棋戦。ただ、その独自性ゆえに棋士やファンからの注目度も高く、ここでの活躍が大きなきっかけになることもある。意気込みを聞かれると「しぶとくというか、かっこつけずに負けたくない一心で戦おうと、それを盤上で見せられたらという風に思っています」と、言葉に力を込めた。その甘いマスクが敗戦でゆがむより、勝利で晴れやかである方が、多くのファンもきっと喜ぶ。
◆AbemaTVトーナメント 将棋界で初めて7つのタイトルで永世称号の資格を得る「永世七冠」を達成した羽生善治九段の着想から生まれた、独自のルールで行われる超早指しによるトーナメント戦。持ち時間は各5分で、1手指すごとに5秒が加算される。羽生九段が趣味とするチェスの「フィッシャールール」がベースになっている。1回の顔合わせで先に2勝した方が勝ち上がる三番勝負。予選A~Cブロック(各4人)は、三番勝負を2回制した棋士2人が、本戦への出場権を手にする。本戦トーナメントは8人で行われ、前回優勝者の藤井聡太七段、タイトルホルダーとして渡辺明二冠がシードとなっている。
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▶5/12(日)19:00~ 第2回AbemaTVトーナメント 予選Bブロック<前編> 糸谷哲郎八段、中村太地七段、都成竜馬五段、佐々木大地五段