持ち時間5分、1手につき5秒が加算される将棋の超早指し戦「第2回AbemaTVトーナメント」の予選Bブロック二位決定戦の三番勝負が5月19日に放送され、中村太地七段(30)が都成竜馬五段(29)にフルセットの末2-1で勝利し、ブロック2位で本戦トーナメント出場を決めた。中村七段は一位決定トーナメント1回戦(都成五段戦)、二位決定トーナメント1回戦(佐々木大地五段戦)、そしてこの二位決定戦と、全ての対戦でフルセットの激闘。さらに千日手もあったことで、全10局を戦い抜き、前回覇者・藤井聡太七段(16)らが待つ本戦への切符をもぎ取った。
3局、3局、そして4局。中村七段にとっても未経験の激闘の繰り返しを乗り越えた。二位決定戦も1勝1敗となり、迎えた正真正銘の決定局。「結果が全てだという風に思っていた」と、とにかく勝利にこだわった。通算9局目となった対局は、まさかの千日手による指し直しに。後手番から先手番になり、持ち時間も2分15秒残した(都成五段は38秒)状況からの指し直しで優位に立った。あとは己の体力、気力で押し切るのみ。予選Bブロックの最後にふさわしい集大成のような将棋で、131手で勝利した。
千日手による指し直し局を含め、計10局を戦ったが、実は予選Bブロックで行われた5戦は、全てフルセット。一位通過を決めた糸谷哲郎八段(30)から2連敗で敗退した佐々木大地五段(23)、そして中村七段と都成五段、いかに激戦ブロックだったかがよく分かる結果が出た。改めて臨む本戦トーナメント1回戦で、中村七段は多くの経験を持って挑むことができる。「1日、充実した時間を過ごすことができました。(本戦では)視聴者の方に楽しんでいただけるように、わくわくドキドキするようないい将棋を指したいなと思っています」と、全身の疲労感とともに別の何かをしっかりと感じた。まさに「修行」にも近いような試練の日を乗り越えて、中村七段が新たな領域へと踏み込んでいく。
敗れた都成五段のコメント 非常に疲れはしましたけど、得るものも大きかったかなと思います。またこういった機会をいただくことがあれば、次はもっとしっかりと調整してというか、たくさんトレーニングを積んでから臨みたいと思います。
◆AbemaTVトーナメント 将棋界で初めて7つのタイトルで永世称号の資格を得る「永世七冠」を達成した羽生善治九段の着想から生まれた、独自のルールで行われる超早指しによるトーナメント戦。持ち時間は各5分で、1手指すごとに5秒が加算される。羽生九段が趣味とするチェスの「フィッシャールール」がベースになっている。1回の顔合わせで先に2勝した方が勝ち上がる三番勝負。予選A~Cブロック(各4人)は、三番勝負を2回制した棋士2人が、本戦への出場権を手にする。本戦トーナメントは8人で行われ、前回優勝者の藤井聡太七段、タイトルホルダーとして渡辺明二冠がシードとなっている。
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