持ち時間5分、1手につき5秒が加算される将棋の超早指し戦「第2回AbemaTVトーナメント」本戦1回戦(三番勝負)が6月9日に放送され、シード棋士の渡辺明二冠(35)が佐々木勇気七段(24)に2-0のストレートで勝利し、準決勝進出を決めた。タイトル22期の実績を誇る渡辺二冠が貫禄十分の内容で、前回準優勝の佐々木七段を一蹴した。
2018年度、トップ棋士ばかりを相手に勝率.800を残した力強さは、超早指し棋戦でもいかんなく発揮された。大会参加を前の目標に「1勝」と控えめな数字を口にしていたが、蓋を開ければ勢いのある若手相手に2連勝。一度、盤に向かってしまえば、そのあとはただただ強い渡辺二冠の姿ばかりが目立った。
先手番の第1局、勢いのいい佐々木七段の攻めをがっちりと受け止めた。「先に攻められる展開だったんですけど、そこの受け方がまずまずうまくいった」と、勝因を分析した。中盤までの守勢から一転、攻勢になってからは淀みない寄せ。ほとんどの棋士が未体験の超早指しにも、対局の中で対応していった。
2局目も、その強さが目立った。本人は「時間が最後の方なくなってくるので、そこはやっぱり結構慌てますね。手もぷるぷる震えて」と、重要な公式戦でもない体の反応に驚いたが、盤面は安定感ばっちり。解説した行方尚史八段(45)も「非常に安定した指し回し」と称えるほかない快勝だった。
優勝候補が前評判どおりの力を発揮し、準決勝進出一番乗り。今後も強豪棋士との対局が続くが「誰と当たってもという感じなので、特に作戦はありません」とあっさり答えると、目標には「優勝を目指します」と、当初の「1勝」から笑顔混じりに大きく変更した。「未経験の超早指し棋戦」という懸念点を快勝で塗りつぶした渡辺二冠が、はっきりと頂点を視野に入れた。
敗れた佐々木七段のコメント 今回、結構練習して臨んだんですけど、盛り上げられなくて残念なんです。渡辺二冠とは、なかなか当たらないので、今回こうして当たれたことは、とてもよかったなという風に思います。第3回は出られるように、結果を公式戦の方でも出していきたいなと思います。
◆AbemaTVトーナメント 将棋界で初めて7つのタイトルで永世称号の資格を得る「永世七冠」を達成した羽生善治九段の着想から生まれた、独自のルールで行われる超早指しによるトーナメント戦。持ち時間は各5分で、1手指すごとに5秒が加算される。羽生九段が趣味とするチェスの「フィッシャールール」がベースになっている。1回の顔合わせで先に2勝した方が勝ち上がる三番勝負。予選A~Cブロック(各4人)は、三番勝負を2回制した棋士2人が、本戦への出場権を手にする。本戦トーナメントは8人で行われ、前回優勝者の藤井聡太七段、タイトルホルダーとして渡辺明二冠がシードとなっている。
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