持ち時間5分、1手につき5秒が加算される将棋の超早指し戦「第2回AbemaTVトーナメント」の本戦トーナメント1回戦(三番勝負)が6月16日に放送され、糸谷哲郎八段(30)が近藤誠也六段(22)に2-0のストレート勝ちを収めた。これにより準決勝で、渡辺明二冠(35)と対戦することが決まった。
いよいよ早指しの雄がエンジン全開だ。予選ブロックでは1位通過とはいえ、三番勝負のフルセットを2回、ぎりぎりで勝ち抜いていたが、本戦ブロックでは各棋士から早指し早見えの力を認められる糸谷八段の力が一気に解き放たれた。
1局目は、若手有望株の近藤六段が見せた隙を見逃さなかった。「ちょっとうまく行き過ぎた」と振り返るほど、途中からは完全にペースを握り、そのまま押し切る快勝劇。解説を務めた行方尚史八段(45)も「気がついた時には、近藤さんがどうしようもなくなっていた。(糸谷八段は)長時間の対局より才が増していると感じられるくらい」と大絶賛した。
続く2局目は、挽回を期す近藤六段に、がっちりペースを握られた。それでも劣勢になってから真価を発揮するのも、糸谷流の特徴の一つ。超早指し戦という特殊環境の中で、想定外の手を繰り出し、相手の幻惑。一度自分に傾いた流れを渡すことなく、そのまま決着をつけた。
予選から通じて3戦目にして、初のストレート勝ち。今回のルールとの相性を聞かれ「だいぶ歳も取ってきたので、手も見えなくなってきてるんですけど、普通の将棋に比べれば得意かもしれません」と、自然と笑みもこみ上げた。次戦は、いよいよ優勝候補の一人、渡辺二冠と準決勝で対決。逆ブロックのシード棋士で前回の優勝者、藤井聡太七段(16)の連覇を阻むとすれば、この2人が超有力候補であることに間違いない。準決勝に向けて「精一杯自分の力を出し切りたいと思います」と表情を引き締めた糸谷八段が、早く、力強く、そして何かを起こす一手を、また指し続ける。
敗れた近藤六段のコメント (第2局は)決めきれなかったのは酷かったですね。情けないですね。(次回出場について)このトーナメントは、やっぱり成績優秀とかで選ばれた方のみなので、今年度もう一度活躍して出られるように頑張りたいです。
◆AbemaTVトーナメント 将棋界で初めて7つのタイトルで永世称号の資格を得る「永世七冠」を達成した羽生善治九段の着想から生まれた、独自のルールで行われる超早指しによるトーナメント戦。持ち時間は各5分で、1手指すごとに5秒が加算される。羽生九段が趣味とするチェスの「フィッシャールール」がベースになっている。1回の顔合わせで先に2勝した方が勝ち上がる三番勝負。予選A~Cブロック(各4人)は、三番勝負を2回制した棋士2人が、本戦への出場権を手にする。本戦トーナメントは8人で行われ、前回優勝者の藤井聡太七段、タイトルホルダーとして渡辺明二冠がシードとなっている。
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