「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」の中止から6日。問題の終わりはいまだ見えず、「芸術に政治が介入していいのか?」「そもそもこれらの作品は芸術なのか?」といった議論が続いている。
開催地の愛知県では、「国民の心を本当踏みにじるのではないか」(河村たかし名古屋市長)、「税金でやるからこそ、公権力でやるからこそ表現の自由は保障されなければいけない」(大村秀章愛知県知事)と主張が対立する中、論争は大阪にも飛び火。大阪府の吉村洋文知事は7日、「反日の政治活動だ。こんなのは」と発言し、愛知県を批判した。「民間で開催された展示会なら許容できる」としつつも、「愛知県が主催で行う表現行為になれば、これは大問題だと思う。僕は辞職相当だと思う。慰安婦像もこれだけ日本がおかしいのではないかと韓国に対して言っている中で、愛知県が主催して展示しているのは、進退にすら関わる問題だと思う」とも述べた。
これに対して愛知県の大村知事は8日、「憲法21条、表現の自由についてまったく理解していないのではないか。はっきり言って哀れだと思う。この程度のレベルの人が大阪の代表なのかと。若気の至りだからいいじゃないかということでは済まない、この発言は。民主主義を否定している」と反論した。
抗議が殺到した「少女像」。作者のキム・ソギョン氏は今回の騒動について「(撤去は)残念でもあり、呆れてしまう。民主主義国家ではあり得ないことだと思う。少女像の撤去とともに、表現の不自由展が中断されたことに対して、問題提起のデモが展示会場前でなされたという話を聞いて、日本の知識人の方がまだたくさんいる、一緒に戦って頂いているのだなと勇気をもらったし、少女像は反日の象徴ではなくて平和に対する象徴であることを知らせようと、今回展示会に参加した」と話す。
今回の騒動は表現の自由なのか。それを逸脱した政治プロパガンダなのか。そして、中止は正しかったのだろうか。8日放送のAbemaTV『AbemaPrime』は議論した。
番組MCのふかわりょうは、「実際に会場に足を運んだわけではなく、展示されたものをどう感じるかの自由は万人にあると思う」とした上で、「今回の作品は芸術の括りの中には入らない、芸術祭という大きなテーマのもとに並べられるものではないと感じるものが多かったと思う。表現の自由という言葉を逆手にとって、“表現の不自由展”というテーマで開催されているが、個人的には“表現の無責任展”に近いと感じた」との考えを示す。
また、慶應義塾大学の特任准教授などを務めるプロデューサーの若新雄純氏は「作品を直接見ていないが、個人的には受け付けない、良くないものがあったと思っている。ただ、それと展示を中止するという話は別。脅迫した人を突き止めて捕まえることができたわけで、最後までとことん『この展示はおかしい』『こうあるべきだ』『これは嫌だ』と議論すれば良かった。芸術祭に相応しくない作品も含まれているがやりきる、という覚悟がないのであれば、チャレンジングなものをアートという文脈に乗せてきた意味がない。おかしいと言われた時に堂々としていないと、そのおかしさと向き合っていないのではということをすごく感じた」と指摘した。
一方、週刊東洋経済編集長の山田俊浩氏は「表現の不自由展は今回が初めてではなく、元々東京でやっているものの“その後”としてやることに意味がある。今回、展示会をあいちトリエンナーレが企画したというよりは、あくまで場所を貸してイベントを組み合わせた形。中身の詳細は事務局も知らなかったし、公表もしていなかったということで、津田さんは狙ってサプライズとしてやっているはずだ。となると、批判があったところで覚悟を決めて貫かなければならず、その部分がこの最近のモヤモヤ感につながっていると思う。しかし、雇われの身の芸術監督としては、会長など主催者側に撤去しろと言われたら従わざるを得ないだろう」と推察した。
「連日名古屋でも取り上げられている」と話す愛知県出身のフリーアナウンサー・柴田阿弥は「いろいろな意見があるので、批判が起きることはすごく良いと思う。ただ、脅迫などをしてしまうと、批判している人の言葉や気持ちまでも踏みにじっていると思う」と見解。
お笑いコンビ・インディアンスの田渕章裕は、ライブでのある出来事が今回の問題に似ているとし、「ある人は芸術だと思って見るが、ある人は芸術ではないと思って見るということは多々あると思う。過去にライブで“どうも菅田将暉です”とボケたら、ファンの方にすごく怒られたことがある。『ボケでも言わないで。違うから』『ボケは分かるが言って欲しくない』と。これは、芸術かもしれないが芸術として出して欲しくないという意見と一緒かなと感じる。(そういった反応は想定していなく)『どこがやねん』って言ってくれると思った」と明かした。
企画展の中止決定に際して、芸術監督の津田大介氏は「表現の自由が後退する悪しき事例を作ってしまった」と述べている。しかし、若新氏は「後退する」という表現に違和感があるといい「表現に批判があったことは後退にはならない。批判を受けて中止するという決定で、表現の自由を“自ら”後退させた。批判的な意見は自由で、それを受け止めてしまったら『覚悟が足りなかった』と見えてしまうことは仕方がないことだと思う」と苦言を呈した。
(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
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