2人がボールを打ち合うテニスは、その競技特性からすると基本的にベースラインを横に走るケースが多くなる。前後に走ることは稀で、意図的に相手を前に呼び込むボールはドロップショットと呼ばれている。そしてこのドロップショットだが、一試合を通して見られることは数本。まったく使わない選手だって結構いる。理由は、テクニック的に微妙なところがあり、ちょっとでもミスすると簡単にポイントを失ってしまうからだ。
このドロップショットを使う選手の試合は面白くなる。なぜなら、基本の左右動きに前後の動きが加わり試合が立体的になるからだ。といったことで絶大な人気を誇るのがフランスの才人ブノワ・ペールの試合だ。セルビアのドゥサン・ラヨビッチ戦では訳の分らないドロップショットを連発。たったの2ゲームで3本のドロップショット。それが決まってしまうのだ。こうなれば試合はペールのペース。どんなボールも諦めずに追うガンバルマン(ラヨビッチ)を翻弄して第1セットは6−2で圧倒。しかし、このまま押し切ることもできないのがペールというテニス選手なのだ。