8日にパースで行われたテニス国別対抗戦・ATPカップ、日本対スペインの試合で、珍しいワンシーンが見られた。
第三試合のダブルスに、直前のシングルスで西岡良仁と2時間越えの熱戦を演じたばかりの世界ナンバーワン、ラファエル・ナダルが登場。試合中に頭上遥か上空のボールを取るためにラケットを空高く投げる一幕があった。
ナダルは絶対にラケットを叩きつけないことで有名だ。連戦を選んだ王者の執念だろうか、仮に上方向であったとしても、大きくラケットを投げる姿を見られたのはラッキーだったかもしれない。
ポイント後もいつもと変わらぬすました表情で次のポイントの準備に取り掛かっていたナダルに試合を放送したAbemaTVの視聴者からは「ナダルが(ラケットを投げるのは)珍しい)」「ラケットw」「ナダルが壊れた」などのコメントが寄せられた。
テニスでは、ラケットが手から離れた状態でボールに当てても有効とはならない。ボールがナダルの遥か頭上を通過して、手を伸ばした程度では届かないことが確定した段階で、ポイントにつなげる方法はない。
この段階で決勝トーナメント進出が決まり、目の前のダブルスの試合に勝つ必要はなくなっていたスペインペア。それでも訪れた大観衆の前で手を抜くことは一切せず、勝利への執着心を見せた。下手をすると退屈になりかねない試合にアクセントもつける。とっさの行為だがまさに一流のプレーと言っていいだろう。
文/今田望未(テニスライター)