王者ナダルと互角の攻防見せた西岡良仁、2020年は自己最高シーズンの予感
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 ATP(男子プロテニス協会)が主催する国別対抗戦『ATPカップ』での日本の決勝トーナメント進出は叶わなかった。2勝同士で迎えたスペインとのグループステージ最終戦は、勝利したほうがグループ1位通過。日本はもし敗れても1試合に勝てば決勝トーナメント進出のチャンスありという状況だったが、スペインの3連勝によって夢は潰えた。

 しかし、ここでも会場を大いに湧かせ、遠く日本から応援するファンを興奮させたのが西岡だ。グランドスラム優勝19回を誇る王者ラファエル・ナダルに対して互角のラリー戦を展開。チェンジエンドで二人がすれ違うたびに、「身長差15cm」「体重差21kg」のハンデに愕然とさせられるものの、ひとたびラリーが始まるとそれを忘れてスリリングな攻防に見入った。初戦の世界ランク45位のパブロ・クエバス、2戦目のニコロズ・バシラシビリのようにナダルを自滅に陥れることは不可能だったが、理詰めでナダルの堅固なディフェンスを崩していく。そうして奪ったウィナーは一本や二本ではなかった。

 ただ、不屈の王者ナダルの、ピンチで見せる気迫と研ぎ澄まされたプレーにはただ脱帽するしかない。第1セット、西岡は2度ブレークを先行したが、いずれもすぐにブレークバックを許し、タイブレークを奪われた。第2セットもチャンスとピンチが行き来する展開の中、4-4からとうとう致命的なブレークを喫し、そのまま敗れた。

「感触は良かった。練ってきたプランも完璧で、セットを取れなかったのは悔やまれる。でもチャンスで取りきれないのは、トップに勝つ実力がまだないということ。ほんのちょっとの差というのが実は大きい」と西岡。打ち合いは互角、この勝負は互角でも、チャンスを取りきる力の差が勝敗を分けるのだ。

 たとえば第1セットの第9ゲームをブレークしてサービング・フォー・ザ・セットを迎えた場面。ミスをしない西岡がこのゲームはアンフォーストエラーで2ポイントを献上した。こういう負の変化を決して見逃してくれないのが、ナダルのようなトッププレーヤーだ。結局ラブゲームでブレークバックを許した。

 ナダルはオンコート・インタビューでこう西岡を称えた。

「ニシオカは才能豊かなすばらしいプレーヤーだ。すごく難しいことをいとも簡単そうにやっている。タイミングのずらし方がうまいし、動きの良さはツアーでもトップクラス。辛いケガからこんなに高いレベルまで戻ってきたことをうれしく思う」

 西岡が試合の最中に左膝の前十字靱帯を断裂する大ケガを負ったのは2017年3月。ナダルと西岡のアカプルコでの初対戦からちょうど1カ月後のことだった。予選から準々決勝まで勝ち進んだ西岡は、そこでナダルと6-7(2) 3-6と今回同様に善戦した。だからナダルは覚えていたのではないだろうか。

 手術と療養とリハビリを経て、約9カ月後にツアーに復帰。それから2年経ったが、ランキングではケガ当時の絶好調だった時期の58位をまだ超えることができていない。しかし、そのテニスは明らかに進歩し、磨かれていることを証明した今大会だった。

「自分のテニスにはとても満足している。シーズンの始めにこういうテニスができてうれしい」

 その収穫はどんなに大きかったことだろう。もし錦織圭が予定通り出場し、西岡がナンバー2としての出場だったら、このグループステージで対戦したはずの相手のランキングは522位、679位、9位だった。エースとして戦ったことで、それが45位、26位、1位となったのだ。そして、格上相手に経験を積むだけでなく、〈らしさ〉を十分すぎるほどに発揮して2勝1敗という成績を残した。西岡の2020年シーズンは、何か特別なものになりそうだ。

文/山口奈緒

【映像】ナダルvs西岡の激闘

【西岡覚醒!!世界一に喰らいつく!!】西岡良仁vsナダル(グループB) | 動画視聴は【Abemaビデオ(AbemaTV)】
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