30日、小池都知事は緊急会見を開き、夜の繁華街、中でもカラオケやバーなどへの出入り自粛を要請した。
東京都では28日、29日と2日連続で60人以上の感染が判明し、感染者数が激増している。これを受けて、小池都知事はただの外出自粛ではなく、「夜間から早朝にかけて営業している、接客を伴う飲食業の場で感染したと疑われる事例が多発している。特に若者はカラオケ、ライブハウス、そして中高年の方はバーやナイトクラブなどに行くことは当面お控えいただきたい」と様々な“夜の店”を名指しした。
この要請に、銀座でクラブを4店舗運営し、100人以上の従業員を抱えるママは「『どうやって生きていったらいいのですか』と。(従業員に)働いていく場所を提供してあげたいと思う。困っちゃう子は本当に困っちゃいます」と話す。一方、経営者としては、「(この際)『営業をするな』って言ってもらったほうが楽なのだけども。ママとしては、(休業なら)お店自体は人件費がかからずに家賃だけで済むし、と思います」と明かした。
自粛により被った経済的な損失と補償をどう考えていくべきなのか。いま苦境に立たされているのは文化や芸術だ。チケット大手「ぴあ」の試算では、音楽やスポーツなどのエンタメ業界の市場規模は年間約9000億円。しかし、新型コロナウイルスにより多数のイベントが中止や延期となり、その損失額はすでに市場の2割にあたる約1750億円に上るという。
こうした中、文化庁の宮田亮平長官の応援メッセージが物議を醸している。宮田長官は「日本の文化芸術の灯を消してはなりません」「明けない夜はありません! 今こそ私達の文化の力を信じ、ともに前に進みましょう」と苦境に立たされている文化芸術に関わる全ての人に向けたメッセージを綴ったが、中には具体的な補償についての言及はない。ネット上では「前に進むために補償の話を進めてください」「スーパー精神論。文化芸術の灯を消さないために必要なのは、携わる人々の生活の補償、現金です」といった声があがっている。
この補償を求める声は広がり、著名な文化人たちも動き始めている。作家の坂本龍一や女優の水原希子らも賛同しているのは、文化施設の営業自粛への助成金交付を求める署名運動「#SaveOurSpace」。10万人の署名を目標としているが、すでに20万人を超えたということだ。
この文化芸術への補償に対し、安倍総理は「文化・芸術・スポーツの火が消えてしまったら、復活させるのは大変と重々承知している」としたものの、税金での補償には難色を示し、無利子・無担保の融資だけでなく「給付金制度」の創設も検討すると答えている。
今の辛い時期だからこそ必要な文化芸術が受けている打撃。BuzzFeed Japan記者の神庭亮介氏は「ふんわりとした空気、同調圧力で『自粛して』というのではなくて、きちんと禁止して補償するという形にしてほしい。Twitterでも『#自粛と給付はセットだろ』というハッシュタグが流行っていたが、ここに全てのメッセージが入っている。なぜ、諸外国のようにフリーランスや文化系の人たちに対する助成金、補助ができないのか残念に思う」と話す。
また、補償は文化芸術に限らず「困っている全ての人にするべき」とし、「小池都知事の会見の中で『酒場』を避けてほしいという話があったが、経済のすごく大きな範囲に影響がある。明日の食事や家賃に事欠く人も出てくると思う。お医者さんはコロナの重症度によって優先順位をつけるトリアージはできるが、コロナ以外の経済的な要素も含めた社会全体のトリアージを担うのは政治だ。家から1歩も出なければコロナには感染しないが、不況によって死ぬ人が出てくるかもしれない。両極端の間のどこにレバーを持ってくるかという政治の判断が求められているのに、日本は軸足が定まっていない。『最大多数の最小不幸』を目指し、自粛でなく禁止した上で補償するべきだ」と苦言を呈した。
エンタメ業界や飲食の自営なども含めると、フリーランスの人は多くいる。フリーランスへの各国の対応を見ると、イギリスは月2500ポンド(約33万円)を上限に所得の8割を補償、ドイツは自営業者らに3カ月で最大9千ユーロ(約108万円)、フランスは最大1500ユーロ(約18万円)の支援金。一方で、日本は一定の条件を満たせば日額4100円というものだ。
これにフリーアナウンサーの柴田阿弥は「私もフリーランスなので、個人の働いている時間がつかめず、収入に上下差があることも重々承知しているが、1日4100円、20日で8万2000円だとして、そこから家賃を払って生活していくとなると厳しい。さらに国がフリーランスなど働き方も広げていこうとしているのは矛盾を感じる。本当に感染を食い止めなければならないのであれば、“仕事に行かない”ための補償が必要な段階に入っているのではないか」と訴えた。
(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)
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