持ち時間5分、1手指すごとに5秒が加算される将棋の超早指し団体戦「第3回AbemaTVトーナメント」の予選Aリーグ、チーム豊島VSチーム三浦が4月18日に放送され、中堅戦で三浦弘行九段(46)が佐々木勇気七段(25)との三番勝負に2勝1敗で勝利、+1ポイントを獲得した。
▶映像:大熱戦の末に三浦弘行九段が佐々木勇気七段を下した第3局
強者は、自分にとってプラスになるものをすぐに吸収する。未体験の超早指し棋戦という“局地”においても、三浦九段はその優れた吸収力で、あっという間にその戦場でも力を手に入れた。
第1回、第2回大会に出場した経験を持つ若手実力者・佐々木勇七段に対して、第1局を前に本田奎五段(22)から情報を収集。棋風だけでなく精神面まで、限られた時間を無駄なく使い、入念とチェックした。1局目こそ叩き合いで競り負けたが、「次は反省を活かしたい」と次の戦いに向けて刃を研いだ。
2局目、後手番の三浦九段が選んだ戦法は、相掛かりからのひねり飛車だった。近年では使い手が少なくなったこの戦法、実は先鋒戦で相手チームの斎藤明日斗四段(21)が用いて成功を収めたもの。秘策として出されたものをすぐさま“完コピ”し、実戦に活かした。勝ちが見えたのは「本当に最後の最後」という大接戦になったが、1局目同様に激しい戦いを制して、巻き返しに成功した。
こうなれば3局目も迷わずひねり飛車だ。激戦なのは変わらずだが、不安材料に挙げていた超早指し戦の実戦不足が徐々に解消されていけば、あとは地力がものを言う。互いの持ち時間が少なくなったところで、勝負手を繰り出し佐々木勇七段を困惑させると、「本当に指運」と謙遜しながらも「1局目の反省を2局目、3局目に活かせた」と逆転の勝利。2勝1敗で三番勝負をもぎ取った。
今大会に臨むにあたり、三浦九段は最初から若手との交流、何かを学び取る姿勢でいた。ドラフトで指名したのは、ほとんど面識もない20代の2人。まだ見たこと、感じたことのない将棋観に出会うことを楽しみにしていたという点では、三浦九段は実に貪欲だった。20歳以上も年下の棋士とチームを組んで謙虚に学び、相手チームの戦法でも優れたものは素直に学び取る。参加している全12チーム、36棋士は若手棋士が多いが、様々なことを経験した大会後、一段と強くなっているのが三浦九段であったとすれば、それはこの吸収力の為せる技だ。
◆第3回AbemaTVトーナメント
持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行い、1回の対戦は三番勝負。3人1組の12チームが、3チームずつ4つのリーグに分かれて総当たり戦を実施。1対局につき1勝を1ポイント、1敗を-1ポイントとし、トータルポイントの多い上位2チーム、計8チームが決勝トーナメントに進出する。優勝賞金1000万円。
◆出場チーム&リーダー
豊島将之竜王・名人、渡辺明三冠、永瀬拓矢二冠、木村一基王位、佐藤康光九段、三浦弘行九段、久保利明九段、佐藤天彦九段、広瀬章人八段、糸谷哲郎八段、稲葉陽八段、Abemaドリームチーム(羽生善治九段)
(ABEMA/将棋チャンネル)