将棋界の頂点に立つ男は、エンタメでも名人級だった。将棋の渡辺明名人(棋王、王将、36)が8月22日、プロ将棋界初の早指し団体戦「第3回AbemaTVトーナメント」の決勝に登場。近藤誠也七段(24)、石井健太郎六段(28)との「チーム渡辺」で、永瀬拓矢二冠(27)、藤井聡太二冠(18)、増田康宏六段(22)の「チーム永瀬」と対戦した。結果こそ敗れて準優勝だったもの、盤外戦では終始大活躍。エンターテイナーとしての実力を、存分に発揮した。
通常の公式戦と異なり、エンタメ性も強い非公式の同棋戦で、最後の最後まで盛り上げたのは、将棋界の序列1位・渡辺名人だった。激戦必至と予想された決勝の第1局直前、作戦会議室で石井六段が藤井二冠について対策を立てようとするところ、なんと渡辺二冠はおもむろにバナナの皮をむき出した。これはチーム永瀬のサブネームが、「チームバナナ」であることから、相手を食ってやろうというパフォーマンス。一緒に食べ始めた近藤七段が途中から一緒に作戦を練り始めたのだが、渡辺名人はそのままもぐもぐと食べ続け、結局その作戦会議では一言もしゃべらなかった。
このプロレスチックな演出に、ファンも早々に大はしゃぎ。「エンターテイメントをわかってらっしゃる」「バナナを黙々と喰う渡辺名人www」「チーム渡辺がバナナを食べるという場外戦(笑)」と、公式戦では絶対に見られないものについて、歓迎のコメントが多数寄せられた。
戦いを終えても、サービス精神はまだまだ続く。チーム渡辺はサブネームが「所司一門」。3人とも所司和晴七段(58)の門下で、準優勝以上の成績を収めた場合には、ファンのためにオリジナルグッズとして、扇子を作ることを決めていた。進行役の山口恵梨子女流二段(28)が「ぜひご購入ください」と視聴者に向けて呼びかけたところ、真横にいた渡辺名人は「いや、売らない、売らない」と即答。山口女流二段が「え?売らないんですか?」と驚くと、「売り物じゃないですよ。配る用。視聴者プレゼントにも出しますし、売る予定はないですね」と、あくまで日頃から所司一門を支えてくれている関係者やファン向けての贈り物だと説明した。
さらには、とどめの一手があった。山口女流二段が今後の情報に注目してほしいと語ると、渡辺名人は「(出来るのは)だいぶ先ですよ。忘れたころぐらいだから、明日チェックしても意味ないです。扇子ですから数カ月はかかります」と追加。待望のグッズながら、いつ出来上がるかわからないお楽しみというあたりも、ファンの心をくすぐるものになっていた。
◆第3回AbemaTVトーナメント
持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで対局。全12チームが4つの予選リーグに分かれて戦い、各リーグ上位2位までが予選通過。決勝トーナメントは5本先取の9本勝負で行われ、勝ち越しが決定した時点で終了する。1チームは3人で、各棋士は1試合につき最低1局、最大3局の範囲で指す必要がある。対局者は各対局前に決定する。優勝賞金1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)