合流新党の代表選が10日に行われ、代表は枝野幸男氏、党名は「立憲民主党」に決定。149人を擁する最大野党が誕生した。
そもそも“安倍総理一強”の状態にくさびを打つべく、合流に向け調整を加速させていた両党。しかし、安倍総理が辞意を表明したことを受け、世の注目は次の総理を決める自民党総裁選へ。派閥間の駆け引き、選挙期間の短縮など慌ただしさが増す中、合流新党代表選も告示から投票までわずか4日とドタバタの展開に。しかも、ともに合流を進めてきた国民民主党の玉木代表ら一部が新党に参加しないなど、決して一枚岩の代表選ではなかった。
そんな状況に声を上げたのが新党に参加する若手議員たち。11日の『ABEMA Prime』では、旧・立憲から立憲民主党に合流した中谷一馬衆議院議員に、今後の展望などについて話を聞いた。
■「仲間たちと世代をしっかり創造する」
合流までの紆余曲折もあってか、有権者の期待は高まっているとは言い難い状況だ。ANNの世論調査によると、「野党の合流新党に期待するか」という質問に、「期待する」と答えたのは27%、「期待しない」と答えたのは61%、「わからない、答えない」は12%だった。
この結果について、「27%の方はすでに期待していただいてると前向きに捉えていきたい。小選挙区比例代表制のゲームルールで戦っていく以上、やはり野党がある程度結集して、手を繋いで現政権を超える選択肢を作っていく必要があると思っている。共産党やれいわ、社民党、玉木新党など今まで安倍政権と対峙してきた政党はあるが、そういう枠を超えて立憲民主党という新しい政党の中で、仲間たちと世代をしっかり創造しながらいい政党を作っていきたいと思う」と中谷氏。
一方、2ちゃんねる創設者の西村博之(ひろゆき)氏は「27%が倍の50%を超えて政権を取れるかどうかだと思うが、この状態で名前も一緒だとプロモーションも限られる。今年中に選挙があるかもしれないと言われているが、なんとなく同じ名前でみんな合流して、いつも通りのことをやるのか」と疑問を呈する。
これに中谷氏は、「それぞれ見えている景色が違うと思う。私の選挙区でいうと、定期的に情勢調査をやるが、立憲民主党の支持率は20%台前半から大体3割。ただ全国平均にすると4~10%に落ち着く。その地域では、自分たちが多様性を持ってボトムアップでやっていこうということをしっかり説明できている。これからは国民民主党、無所属でやってきた方がジョインしてくるので、全国的な支持率をちょっとずつでも上げていけるように、みんなで汗をかかなければいけないと思っている」との見方を示す。
新しい支持者を増やす点について、ひろゆき氏は「これまで立憲や国民民主に投票しなかった人たちに振り向いてもらうとなると、今までと言っていることを変えたり、話を聞いてもらったり、新しい場所・メディアに出るなどしないと変わらないと思うが、どうなのか」とさらに追及。
中谷氏は「僕(の選挙区)でいうと、自民党の支持率は3割前後で、立憲民主が25%前後くらい。要するに、全国的に発言したり考え方を述べていければ、政党支持率を上げていける可能性はあると思っている。1999年の民主党の代表選挙で、菅直人さん相手に2期生40歳の松沢成文さんを担いだのは枝野さんであり、安住(淳)さん、原口(一博)さん、古川(元久)さん、前原(誠司)さんたち。こういう幅を全国的に見せていく。安定感のある先輩たちもいるし、中堅もいるし、若手も元気がある政党だということをもっと全国的に拾っていていただくことができれば、支持されるのではないか」と述べた。
では、旧・立憲民主党の3年間とはどのようなものだったのか。「この3年間で100本以上の法案を出しているし、『野党は反対ばかりしている』とよく誤解されるが、今回の国会で法案の9割に賛成している。立憲と国民の政策の違いを言われることもあるが、これも立国社という会派で彼らと一緒にやってきた」と振り返った上で、「自民と公明で政策が本当にまとまっているかというと、そんなことは全然ない。憲法9条ではむしろ公明は僕らの方に近いくらいで、自公だってそういう問題がいっぱいある。そこでなぜ生き残るのが大事なのかというと、生き残って政権交代しなかったら、自分たちが約束した政策を実現できないから。そのために自公はものすごく貪欲に、もともと政策が違って消費税(増税)も公明は反対していたにもかかわらず、一緒にやっている。そういうことを僕たちも貪欲にならなければいけない。れいわや共産、玉木新党、社民もみんな仲良く一緒にやりましょうというフェーズだと思っている」と訴えた。
■若手候補の擁立叶わずも…「枝野さんを全力で支える」
野党の若手議員22人は9月1日、「合流新党への提言書」をまとめた。その中では、「国民に寄り添い、『国民の共感』を得られる政治の実現」「世代交代を超えた、世代を創造する温故知新の人材活用」「野党結集、自民党・民主党政権を超える新たな選択肢を創る」「保守・リベラルを包摂する新しい政治を創造」などを掲げている。
この提言について、「元々、民主党時代から僕たち若手は仲がいい。先輩たちは色々あるみたいだが、僕たちは合流したら世代をちゃんと創造していこうと。極端な世代交代や新陳代謝みたいな話ばかりではなく、安定した先輩がいて、中堅も若手もいる政党を作ろう。保守やリベラルなど古いものに逃げるのではなくて、もっと包摂するような新しい政治を作らなければいけないと。そしてやはり消費税。世界各国どこを見てもコロナ禍で減税を始めているわけだから、これを旗印に野党がしっかり結集して、自民党、公明党を超える新たな選択肢をつくろうとしている」と中谷氏。
今回、若手の中から代表戦に立候補する案はなかったのか。「実は第三翼の若手候補擁立を模索していた。元々、枝野さんだけで無投票になってしまう可能性があるのではないか、それだと代表選挙も盛り上がらないから若手中心で出られたらいいねと。30人くらい一緒にやろうよと言ってくれた人もいたが、少しずついろんな役職が入ってきたりいろんな関係性があるということで19人になってしまい、若手の候補を擁立することができなかった。切り崩されたという言い方が正しいかどうかはわからないが、僕たちの力不足で候補者を擁立することができず、理想として掲げたことができなかったことは本当に申し訳なかったなと思う」と説明する。
合流新党の若手議員に、若手による盛り上げが必要だと提言していたという慶應義塾大特任准教授の若新雄純氏は、「右左ではなく、若い人たちで逆転するような空気が昔の民主党にはあったと思う。今回合流するにしても代表選をやるにしても、顔が変わらないというのはすごく勿体ない。枝野さんは確かにブランドがあるけど、10年前のもの。とはいえ、立憲の中で注目の若手議員はいるのか。若手がこれだけいる、女性議員であの人がいるなど、急先鋒みたいな人を何人かパッと出せれば、“若い人が活躍できる党なんだ”“150人もいるんだ”という希望は見える気がする。今回合流したことで規模は大きくなったけど、時代を逆行してしまったのではないか」と指摘。
中谷氏は「はじめに名前があがっていたのは石川香織さん。一番歳が若くて、ジェンダーとジェネレーションを包括できるような候補者をもし擁立できたら、多様性を重んじる、ボトムアップでやっていこうという立憲のイメージにもそぐうということで頑張った経緯があった。しかし、いろんな党内の力学がある中で、やっぱりこういう人がいい、小川淳也さんみたいなフレッシュな人がいいとかいろんな意見があった。最終的には20人でまとまれる若手の候補を擁立しようということで、先輩の青柳陽一郎さんを担ごうと頑張ったが、それも力が届かず及ばなかった」と明かした。
一方で、今回代表に枝野氏が決まった以上は全力で支えるとし、「2017年に枝野さんが立憲民主党を立ち上げて、それで衆議院議員になっている若手が多い。そういう意味では極めて感謝しているし、僕らは全力で支えていこうと思っている。そして、支えるからにはこの政党で政権交代しなければいけない。そういう思いを持っているからこそ、緊急提言も他野党の党首へも持って回った。枝野さんはじめ、玉木さん、山本さん、福島さん、志位さんにも行って、『僕たち若手はこういう考え方を持っている』と。100%は受け入れてもらえないかもしれないけど、こういう考え方もあるからと少しずつ競わせて、政権に代わる政党を作ろうというメッセージを出し続けている」と語った。
■想定される選挙、争点は「消費税」
今後はどんな目玉政策で選挙を戦うのか。コロナ禍での消費税対応について、立憲民主党は一時0%、自民党は10%を堅持する方針だ。原発は、立憲民主党が原発ゼロ、自民党はベースロード電源へ。憲法改正は、立憲民主党は未来志向の議論、自民党は改正を目指す。沖縄米軍基地については、立憲民主党が辺野古工事停止、自民党は辺野古移設を考えている。
中谷氏はこの中でも消費税が大きな争点になるとし、「時限的、財源的に行うことは可能だし、イギリスやドイツを見ても減税を始めている。コロナ禍で非常に生活が苦しい状態があるので、これが争点になるのは間違いないと思う。総理になりそうな方が10%よりあげる可能性について言及されているわけだから、ここは明確な論点になってくると思う」との見方を示す。
最後に、中谷氏は「安倍さんだって失敗して反省して、あれだけ長期政権をやった。今回の立憲民主党は、江田憲司さんのような維新の党出身の先輩もいるし、自民党出身の先輩もいるし、多様な人が集まってやっていく政党。反省を生かしてちゃんと前を向く政党に僕らからしていく」と語った。
(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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